あっせんによるパワハラ解決事例

2023年10月5日

ここに掲載しているあっせんによるパワハラ事例は、各都道府県労働局のHPに掲載されていたものを引用いたしました。詳しくは、各都道府県労働局のHPをご覧になってください。また、あっせんの活用をお考えであれば、次のコラムもご参照ください。

【参考コラム】社内的な問題解決に限界を感じたら
【参考コラム】あっせんで満足できる結論を導くためには

また、パワハラの問題解決に活用できる労働局の解決制度は、あっせんだけではありません。パワハラ防止法に基づく解決援助(=助言指導)や調停も用意されています。労働局の解決制度についての概要をお知りになりたい方、これから制度の利用をお考えの方は、以下のコラムをご参照いただければと思います。

【参考コラム】パワハラ防止法の施行によって、解決制度はどう変わるのか

昭和○年より料理店に勤務し、○年前より店長になった。社長の指示により、団体客に提供した料理内容について「メニューの質と量が、適切でない。」ことを部下に話したこのことが社長の耳に入り、社 長から「部下がお前に不信感を持っている。何をしているのか。店長を降りて一からやり直せ。それが嫌なら○月○日で辞めてもいい。」と言われた。結果、○ 月○日で退職したが、20年近く勤務し、このような退職をせざるを得なかったことについて、精神的苦痛を受けた慰謝料として50万円の支払いを求めあっせ んを申請した。形式上は、本人意思で退職した形であるが、退職に際し事業主の意向が強く働いていることから、少なくとも1ヶ月分賃金相当額の支払いを行う よう事業主へ要請。申請人は24万円の金額について納得できないことを主張したが、最終的には双方の合意が成立し事業主は、紛争の解決金として24万円を 支払うことを認め、紛争当事者双方の合意が成立した。

【コメント】「店長を降りて一からやり直せ」という社長の発言が降格(降職)命令であるとすれば、その命令に合理的な理由が無ければ権利濫用となる。理由 となりそうな事実は「部下がお前に不信感を持っている」ことだが、果たしてその事実と、その態様が降格を相当とする程度のものかどうかが問題。一連の発言 は、降格を受け入れないならば退職しろ、という退職勧奨である。退職勧奨自体は違法ではないが、退職する意思のない従業員に対する執拗な退職勧奨は不法行 為となる可能性がある。この事案では申請人が退職しているが、これが解雇であれば無効とされていた可能性が高いと思われます。


Aさんは外資系の会社に勤めていた30代の女性。入社後の10年間に、企業合併等で組織が再三変更され担当業務が外注されたことから、十分な知識のないサービス商品の営業を担当させられるようになった。何回かの試験的な営業活動の後で担当を外されると、毎日のように上司から商品知識やマナーについてのペーパーテスト等を課せられて厳しい評価を下される一方で、「自分の将来をよく考えるように。」との勧奨が繰り返された。 Aさん自身も営業には向いていないと感じ、会社都合退職の扱いでの金銭補償、再就職支援等についての会社側の条件案の提示を求めたが、会社側はそれに応じ ないだけでなく、上司が、Aさんの学歴や吸収合併されてしまったAさんの出身会社を馬鹿にした発言をするなどしたので、自分のキャリアや人格をすっかり否 定されたように感じてしまった。あっせんの結果、Aさんは合併時の早期退職者と同等の、特別な好条件による補償を受けて退職することが出来た。

【コメント】意図的に不慣れな部署に異動させ、研修や業務の成果を最低に評価し、それを前提にさらにそれを改善する課題を課すが、その課題に ついても最低の評価をする・・・という追い込みのスパイラル。本人の能力不足をこれでもかと執拗に刷り込む、退職勧奨を意図した嫌がらせの典型パターンの 一つです。問題の本質は配置転換にあることに気が付けば、解決プロセスが見えてきます。


約2年前から期間の定めのないパートとして勤務していたが、社長から突然、即時解雇の通告を受けた。解雇の理由として、「あなたに協調性がなく、これまでに何人ものパートがあなたの言動を原因として退職している。」との説明があった。しかし、自分も職場のリーダー格の女性パートや経理担当の正社員から度重なるいじめ・嫌がらせを受けていた。 社長は現場の実情を把握せず、リーダーの女性パートの言い分だけを信じており納得できない。突然の解雇による精神的、経済的損害に対する補償金の支払いを 求めた。小規模事業所における社員の適性として協調性が重要視されるのは理解できるとしても、これまでに管理者からの注意・指導が実施されていない等、会 社側の努力がほとんどみられない状況の中で、いきなり解雇処分に至ったことは問題がある。これまでの社員同士のトラブルは、長年の慣例に従ったやり方で解 決できていたとしても、民事訴訟となれば、解雇手続きや解雇の合理性・相当性について厳格に判断されることとなる。簡易・迅速な紛争解決を望むのであれ ば、応分の解決金の支払による和解を検討すべきである。社長が、申請人の請求額金の5割の支払いを提示し、申請人がこの提示金額に合意したため、和解が成 立した。

【コメント】いじめ嫌がらせの事実関係については特に触れられていないように見えるが、あっせんの限界か。事実関係については判断せず、解雇理由の合理性、相当性のみを判断したうえで和解したのかもしれない。


某美容院に試用期間3ケ月の条件で美容師として入社したが、暦で15日目に同僚との協調性を欠くとの理由で即時解雇を言い渡された。実際は先輩同僚からの無視等のいじめにより信頼関係が築けなかったことが原因と判明し、あっせん委員からの解雇の理由としては乏しいのではないかとの教示を受け20万円を支払うことで解決した。

【コメント】まず試用期間中であっても解雇は解雇であって、合理的な理由が無ければ認められない。ちなみに雇用開始後14日以内の解雇は、解雇予告の必要が無くなるだけであって、解雇そのものの相当性とは関係が無い。


前支店長が勤務していた2年間に営業に出してもらえないなど、いじめ嫌がらせを受けうつ病になってしまった。また、営業成績が上がらないことを理由に退職勧奨を 受けている。慰謝料の支払い、又は契約延長を望むとして、あっせんを申請した。これに対し会社側は、「営業に出さなかったのは営業としての身なり等で問題 があったもの。支店として当然の判断をしただけ。客とのトラブル、営業車での交通事故があり退職勧奨したもの。」と主張。被申請人より和解金200万円の 支払いの提示があったが、申請人は2年間の契約延長を望み、結果、2年間契約延長することで合意した。

【コメント】会社が相当額の和解金を提示していることから、事実上前支店長による仕事外しともいえる状況を認めているのだろう。身なりに問題があったので あれば、改善させることで通常の業務は可能であって、そうした対応をせずに本来業務に就かせなかったことは、退職への意図が強く推認されるもの。会社とし ては、改善指導を繰り返すプロセスが必要で、それでも営業成績が振るわないとか、勤務態様が改善しないなどの事実があれば、そこで何らかの処分が合理性を 持つことになる。


パート社員としてレジ業務に従事していたが、不足金があるとの疑いを掛けられ、退職届を出すよう強要さ れた。関係はないと訴えたにかかわらず、その場の雰囲気から止むを得ず一身上の都合とする退職届を書かされ、同日付けで退職させられた。会社からは「信用 できない」などと侮辱的発言も受けた。退職強要による離職に伴う経済的不利益、精神的苦痛に対する補償を求めてあっせんを申請した。事業主は、「疑いをか けた事実はなく、また出勤を促す努力もしてきた」と主張する一方、「円満解決もしたい」と主張したことから、あっせん委員から、退職に至る経緯及び店長の 対応等から、事実上の解雇と判断される可能性もあり、また労働者への嫌疑も憶測にとどまるとの指摘があり、事業主は対応の不備を認め、事業主が解決金とし て17万円を支払い、雇用関係の終了を確認することで和解に至った。

【コメント】労使の事実関係は全く異なるが、対応の不備を認めたということは、会社側になんらかの問題があったことは間違いない。事例のよう に退職届を提出したとしても、そのプロセスで退職届の強要などによって、本人の意思とは異なる意思表示をしたことが明らかであれば、その意思表示を取り消 すことができる。


平成16年10月にアルバイト労働者として雇入れられ、レジ係の業務に従事していたが、主任からいじめ・嫌がらせを受けるようになった。そのため店長へ相談するも、何らの対応もとってもらえなかったこ とから、益々、精神的に追いこまれ、遂には勤務を続けることができなくなり、やむを得ず退職した。経済的、精神的損害に対する補償として、1ヵ月分の賃金 相当の支払いを求め、あっせんを申請した。「いじめ」の事実確認など双方の主張には隔たりが大きかったが、あっせんにより、被申請人が申請人に解決金を支 払うことなどで双方が合意に至った。

【コメント】相談に対して、会社が何の対応もしなかったという事実は重い。会社は分かっていたのに、すべきことをしなかった責任がある。いじめの事実確認 を会社はどの程度行ったのか、そして、その結果をきちんと説明していたのか、申請人(労働者)の申入れに対して誠意をもって対応していたのか、などがされ ていれば、労働者の不満も生じなかったのではないだろうか。


直属の上司からのいじめや嫌がらせにより体調に変調をきたし、病院にかかったところ「うつ病」と診断され、休業を余儀なくされた労働者が、謝罪と配置転換を求めてあっせんの申請をした。あっせんの結果、文書による謝罪と配置転換は叶いませんでしたが、和解解決金を会杜側が支払うことで合意が図られました。

【コメント】法的には、謝罪を求めることはできないが、ここがあっせんのいいところで、話し合いの延長線上であるあっせんでは、謝罪を求めることもでき る。会社側が謝罪をすることはハードルが高い。とくに文書での謝罪を求めたい労働者である申請人の気持ちは理解できるが、口頭での謝罪の気持ちを示す程度 が限界でしょう。


申請人は正社員として勤務していたが、現場の責任者から継続的にいじめを受け、退職に追い込まれたため、責任者の行為に非があったことを認め謝罪するとともに、精神的な損害に対する慰謝料の支払を求めてあっせんを申請した。あっせんの結果、会社が文書による謝罪を行うとともに、解決金を支払うことで双方が合意し解決した。

【コメント】会社が、しかも文書による謝罪を行うというのは極めて異例。事実関係をほぼ全面的に会社側が認めたものと思われます。


上司から労働者の持病を理由に勤務に適さない等発言されたことが苦痛で勤務を継続できなくなったが、その間会社が適正に対応しなかったことに対して、会社に精神的・経済的損害を請求したいとして、あっせんを申請した。その結果、会社側が労働者に和解金を支払うことで合意した。

【コメント】持病が業務遂行に支障があることを、採用時に確認しておく必要がある。そのためには、従事する業務がどのようなものであるかを明確にしておか なければならない。そうした業務に支障があるような持病があることを労働者が秘匿していたり、それを会社が知ることが極めて困難であるような場合には、解 雇を合理的とする理由になる余地がある。ただしこうした健康に関するものなとのデリケートな情報については、慎重に取り扱わなければならない。
しかし、 そうした確認を会社が怠っていた場合や、採用後長期間業務に従事しているような場合には、業務遂行に支障があったと主張することには無理がある。


申請人は、「所長は同期の男性には行わず、自分に対してだけいじめを繰り返した。退職後もうつ病のため仕事が出来ない状態であるので、その補償を求める。」としてあっせん申請が行われた。あっせんの結果、解決金を支払うことで合意した。

【コメント】退職後に在職中のパワハラに対する補償を求めるあっせん。退職後に在職中の問題について何らかの要求をする場合、在職中の問題の事実関係をど う立証するかが大きなハードル。在職中から問題解決のための要求などを会社にしていた場合には、そうした経緯が重要な事実になります。


申請人は、「新店長からいじめを頻繁に受けている。いじめにより不眠・うつ病になったので、その謝罪及び補償を求める。」としてあっせん申請が行われた。あっせんの結果、管理職に対して再教育を実施することと、及び解決金を支払うことで合意した。

【コメント】こうした従業員個人によるパワハラの場合、その原因がその個人の感情的なもののみである場合、社内的な解決が図りやすいが、あっ せんを利用したことは、申請人が社内的な解決を図らずに我慢をした結果なのか、会社の対応が不適切だったのか、そのいずれかだろう。仮に前者であるとして も、職場の事なかれ主義が招くものであったり、相談窓口がない、あるいは相談にハードルが高いなどの問題が考えられる。
結果として、会社は再教育を約束していることから、もっと早く対処できれば、スムーズな解決ができたのかもしれない。


申請人は、営業課長と営業に出かけることが多かったが、課長は何かにつけ、申請人につらく当たり、仕事上のトラブルを全て申請人の責任として会社に報告するなどの嫌がらせが続いていた。ある日、営業課長と得意先周りをしていたところ、対応が悪いと理由も説明もせず頭部を殴打された。申請人は会社にそのことを報告したが、上司に対し注意を行なう等もせず、放置された。この一週間後、申請人は支社長に呼び出され、営業課長等に取り囲まれ、「客からクレームがきているので、始末書を書け。書くまで帰さない。」 と威圧的に言われ、クレーム内容の説明もないまま、「客からクレームを受けましたが、以後このようなことのないよう職務に専念します。再度クレームを受け るようなことをしたときには、私の処分を会社に一任します。」という旨の始末書を書かされた。会社は、営業課長の報告をうのみにし、申請人を退職させよう としているが、本人は退職の意思はなく、(1)暴行について上司本人が謝罪し、会社は上司の管理責任を認めること、(2)始末書を書かせた理由を明確にす ることを求めてあっせん申請を行なった。あっせんの結果、(1)会社が、申請人の上司が申請人に行なった行為について監督責任を認め謝罪文を提出するこ と、(2)申請人が書いた始末書を破棄すること、で紛争当事者双方の合意が成立した。

【コメント】本社が支社の問題を解決している。問題の課長の嫌がらせを支社長が黙認していたと思われる。課長から暴力をどこに報告したのか不 明だが、おそらくはその報告を支社内でもみ消した可能性がある。この問題を無かったことにするために、退職勧奨を意図した始末書の強要につながったのでは ないか。
会社からの謝罪文の提出はかなりレアケースかと思われますが、この場合の謝罪文は、支社長、課長などの行為について会社が謝罪するという文書を提出する ということは、一方で支社長らに対して、間接的にではあるが、極めて重い責任を負わせたことになる。しかもそれが文書であるため、形に残るものであるとい う点は重要。会社がそうしたことを意図したかどうかは?だが、会社も大きなリスクを負う一方で、処分手続きを経ずに懲戒処分相当の効果が生じると思われま す。


店長からきつい口調で叱責されることが続いたことにより精神的苦痛を受けて退職したパート労働者が、会社に対して7万円の慰謝料を求めて申請したもの。会社は店長の対応に問題はなかったと主張したが、あっせんの結果、会社にも落ち度があった可能性を考慮して7万円の支払に応じた。

【コメント】退職前にもあっせんによって解決可能ではなかったと思われる事案。きつい叱責が具体的にどのようなものであったのかにもよるが、 何らかの業務上の問題がきっかけであり、その理由、原因であろうが、いかなる場合でも、叱責が許されるわけではなく、あくまでも業務上の問題の解決につな がるものでなければならない。もっとも、叱責の内容とその程度が問題だが、業務上の問題があるからと言って、その問題を起こしたスタッフに対するいかなる 叱責であろうと無条件で認められる訳ではない。
逆に言えば「叱責≠パワハラ」であって、叱責があったからと言って即それをパワハラということはできない。といういより、業務上必要な叱責は何ら問題は無い。問題は、その叱責に内容にある。


会社上司の暴力により自律神経失調症になり会社に行けなくなった。症状が軽くなり、復職にあたり配置転換を命じられたが納得できない。慰謝料として50万円の支払いを求め、あっせんを申請した。その結果、労働者の自己都合退職とし、会社が解決金として40万円支払うことで合意した。

【コメント】休職期間が終了して復職する場合には、復帰が原則。リハビリ勤務などの対応によっても元の職場に戻れない場合には、解雇にも合理性ありとされ る。ただしこの場合でも、他の軽易な業務がある場合には、その業務への配転の可能性を探ることは大切な配慮とも言えます。しかし事例の場合、現職復帰が困 難かどうかが不明ですが、現職復帰が可能であるにもかかわらず、配置転換をする場合には、就業規則上の根拠規定を前提に配転を合理的と認める理由がある か、あるいは本人同意が必要になります 。
しかし、 表向きは配慮を装いながら、あえて不慣れな職場に配転させ、教育指導の名を借りた能力不足の烙印を押し続け、最終的には解雇をほのめかせつつ、自主退職な ら退職金は満額支給するなどと言って自発的な退職に追い込む事例もある。こうした場合でも、そもそも配置転換に合理性があるのかを問うことで、解決の糸口 が見えてきます。


申請人は、○○株式会社徳島支店に勤務していたが、上司の課長との折り合いが悪く、いじめ・嫌がらせを受けていた。そのため、申請人は支店長に相談して改善を求めていたが、いじめ・嫌がらせは続き、申請人は精神的に追い込まれ退職した。申請人は、職場内でのいじめ・嫌がらせを放置したことによって受けた精神的損害に対する補償を求めてあっせん申請を行った。あっせんの結果、申請人に解決金を支払う事で合意が成立した。

【コメント】問題の改善を求めたが、それを放置した、という事実は、会社の責任が問われる理由になる。労働者から見れば、問題の解決を会社側に求めることは、問題があることを会社側に知らせた、という事実を残すという意味がある。
上司などへの相談によって問題が解決するとは思えないとしても、あるいは、こうした問題を会社は把握しているのに黙認しているであろうことが分かっていたとしても、あえて会社側に解決を求めることは、このように、とても大きな意味があります。


申請人Aは、従来から上司から疎まれていることを感じていたところ、会社内で当日の売上金が合わないことについてレジを担当していたことから疑いをもたれた。Aは、疑いをもたれたことに精神的負担を感じ、出勤することができなくなったとして、会社内における名誉の回復、謝罪及び補償金の支払いを求めてあっせん申請を行った。その結果、会社がAに謝罪し解決金を支払うことで円満に紛争が解決した。

【コメント】疑いをもたれていた、という状況が具体的にどのようなものであったのかが問題。事実関係の調査を行わないまま犯人扱いをされてい た、とか、不足分の補てんを求められていた、などは感情的ないじめ・嫌がらせと変わらない。こうした場合に、以前から会社の金銭管理がずさんであったなど の状況があれば、金額の不一致の原因は、そもそも会社の管理体制にあることになる。


申請人は事務職員として勤務していたものであるが、決済業務について、過去には問題がないと思っていたものが、特定の上司から繰り返し必要以上に激しく叱責を受けたり、指示事項をメモしていたところ「紙が無駄になった。」等、とげのある口調で言われる等個人的な嫌がらせとしか思えない行為を受けた。申請人は会社にこれらのことを相談したが対応してくれなかったとして、謝罪を求めあっせん申請を行った。あっせん結果、会社はいじめ・嫌がらせの事実は否定したものの、業務指導に関し配慮を欠いた点、適正な労働環境調整を怠ったことを認め、不快なつらい思いをさせたことを謝罪し双方和解した。

【コメント】会社の立場としては、いじめ・嫌がらせ=パワハラがあったとは認めたくない。パワハラがあったとは確認できない、と言いつつも、会社による適 切な配慮が足りなかったことは認めている。つまり、会社が何らかの責任があることを認めるとしても、パワハラではない理由であれば、認めてもいい、という 気持ちがある。
話し合いによる社内的な解決を図ろうとする場合には、何が問題の解決なのかを冷静に見極めたうえで、その解決の実を取ることが重要で、実 質的に解決できるはずの問題が、パワハラという言葉にこだわりすぎたために、解決できなくなるということもある。妥協による解決は、相手に気持ちがどこに あるのかを読み取ることができるかどうかがカギになる。


パートとして勤務しているが、倉庫保管の商品位置を教えてくれない、商品の加工方法を教えてくれない、ゴミ処理について自分だけに行わせる等複数の同僚からいじめと嫌がらせを受けていた。上司に状況を説明し改善を申入れたが、一向に改善されず、嫌がらせはエスカレートしたため、やむなく退職し た。精神的苦痛に対する賠償として7万円(1ヶ月分賃金額)の支払いを求め、あっせんを申請した。いじめ・嫌がらせについては、受け止め方のギャップはあ るものの、申請人の申入れに対して管理者として事実確認と改善策をとった経過は認められないことから、金銭支払いによる解決を事業主に要請したところ、事 業主は、紛争の解決金として65,000円を支払うことを認め、紛争当事者双方の合意が成立した。合意文書を作成し、解決。

【コメント】いじめ・嫌がらせ=パワハラの事実関係が確認できない(と会社が主張する)としても、そのパワハラに対して、解決を求められたにもかかわらず、会社が何もしていなかったことは、会社の責任が問われる重要な事実になる。
パワハラがあったときには、すぐに相談などをして解決を求めることが、とにかく重要。会社はそうした相談などがあったときには、放置せずに迅速に何らかの対応を取ることが大切。間違っても無視したり、逆に「お前が悪い」などと言ってはいけない。


申請人は、小売店の販売員として就労していた。本年2月、売上金を精算したところ不足金が生じていた。どうして不足したのかわからなかったが、上司から「申請人が盗んだ」と言われ、犯人扱いされた。 証拠もないのにそのような言葉を発した上司が許せない。精神的に傷つき、身体の調子も悪い。1月分の賃金相当額を請求してあっせんを申請した。紛争調整委 員会より、申請人、被申請人双方に対しあっせん開始を通知したところ、まもなく、被申請人より、当事者間での合意が成立した、旨の連絡が入った。

経過を聞くと、申請人の申し出に基づき社内調査を行ったところ、上司の一部不適切な言動が確認された。申請人の申し出を全面的に認めるわけではないが、 これ以上争うことは得策でないと判断し、1月分の賃金相当額を支払うことで紛争を終わらせたい、とのことであった。
申請人にも確認したところ、あっせん申請後、被申請人から連絡があり、申請人の要求どおりの金額を支払ってくれることになった。また、明細も送られてき た。被申請人が要求に応じてくれることから、あっせんの手続きをこれ以上進めてもらう必要はない、とのことであった。
本事案は、申請人、被申請人が自主的に話し合うことで解決に至った。(茨城労働局HPより)

【コメント】この事例では、結局あっせん期日前に労使双方の話し合いによって問題が解決している。


申請人は4年程前から、申請人のレストランの厨房で働いていたが、4月頃から、職場において嫌がらせを受けるようになった。

7月に上司に電話で、嫌がらせを受けていることについて相談したが、忙しい、として取り合って貰えなかったため、当日は休む旨を伝えた。すると、夜になって上司より連絡があり、今月で辞めて貰ってかまわない、旨を申し渡された。申請人は、それを解雇と受け止め、それ以降は出勤していない。
今や被申請人との間には信頼関係はなく、職場復帰は考えていない。年次有給休暇の残日数分の金額と、再就職先が決定するまでの補償金を求め、あっせんを請求した。
被申請人に事情を確認したところ「申請人は解雇と認識しているようであるが、申請人の上司には解雇の権限がないことは明らかである。しかし、申請人の上 司が、辞めて貰ってかまわない、旨の発言をしたことは事実である。従って、申請人からの有給休暇取得の申請はないものの、残りの有給休暇日数分の金額を支 払い紛争を解決したい。」と申し述べた。
あっせん委員は「被申請人が申請人を解雇した事実は認められず、法的に被申請人には補償金を支払う義務はない。」として、申請人に理解を求めた。しか し、申請人は、納得がいかず和解には応じられない、旨を申し立てたため、再度被申請人に歩み寄りを求め、有給休暇の未使用分の金額を含めた和解金を支払 う、旨のあっせん案を示し、双方の合意を得た。(茨城労働局HPより)

【コメント】辞めてもらって構わない、などと言った直後から、その従業員が出社してこなくなったからといって、会社にとっては好都合、などと 考えてはいけない。解雇通告ではない以上、出社してこなくなった従業員に対しては、これは無断欠勤であって、会社としては、本人の存否確認も含めて、出社 を促さなければならない。それでも何の意思表示もせずに出社しなければ、ここで懲戒処分の対象となる。就業規則の規定を根拠に懲戒解雇をすることとなろう。
この事案だけではないが、何でもあいまいにしておくことは、トラブルの原因になる。特に離職に関わる問題については、お互いの意思をはっきりとさせておく ことが大切。これは労働者にとって特に重要で、会社がなし崩し的に自己都合退職の合理性を主張できる事実関係を積み上げようとしている可能性もある。この 事例のように、法的には、解雇通告を明確にしていない以上、 解雇であるとはまず認めらられない。離職を求められたのであれば、それが解雇通告かどうかを確認することがとても大切です。


申請人は、入社以来、配送業務等に携わってきたが、最近になって、副社長より、注意の枠を超えた暴言を浴びせられるようになった。今月、退職届を半強制的に書かされ、 退職せざるを得ない状況となった。現在は有給休暇を取って休んでいるが、復職については望んでいない。自分としては、真面目に働いてきたつもりである。ま た、毎月の休日出勤、時間外労働に対する手当も不充分である。こうした事に対し、損害賠償、精神的慰謝料、及び、謝罪を求め、あっせん申請を行った。

被申請人から事情を聴取すると、「申請人は従前から勤務態度が悪く、繰り返し注意されたことを逆恨みしているだけである。暴言を浴びせられた、とした日 についても、管理職4名で検討を行い、申請人のみならず、直属の上司にも注意を与えている。退職届を書くよう強要した事実はなく、自らの非を認めて辞職し たものと理解した。申請人が望むのであれば、復職も検討する。」ことを申し述べた。
あっせん委員は、申請人に対しいじめを行っていたのは副社長のみであり、解雇についても認めがたい、と判断した。しかしながら、時間外等、手当の不足に ついては考慮すべきであり、被申請人は、いじめに対する慰謝料と併せ、申請人に対し一定の補償を行うことが妥当である、とのあっせん案を示し双方に提示し た。
その結果、被申請人が一定の和解金を支払うことで合意が成立した。(茨城労働局HPより)


申請者は正社員として勤務していたが、現場の責任者から継続的にいじめを受け、退職に追い込まれたため、責任者の行為に非があったことを認め謝罪するとともに、精神的な損害に対する慰謝料の支払を求めてあっせんを申請したもの。

あっせんの結果、会社が文書による謝罪を行うとともに、解決金を支払うことで双方が合意し解決した。(千葉労働局HPより)


とある件で社長と口論になったところ、突然下請け会社への出向を命じられた。 突然の出向命令に納得がいかなかったためその撤回を求めたが受け入れられなかった。このため精神的にもショックを受け体調を崩し、退職せざるを得なくなっ てしまった。これは実質的には解雇になるので、精神的な苦痛等に対する補償として○万円を要求したいとしてあっせんを申請した。あっせんにより両者の歩み 寄りを促したところ、両者とも歩み寄り、会社が和解金を支払うことで合意した。

【コメント】「実質的には解雇」と主張しているようだが、法的には解雇などでは全くなく、申請人自ら退職を申し出ているのであれば、自己都合退職になる。しかし体調不良によって療養が必要となり会社を休業せざるを得ないのであれば、この体調不良の原因が業務上にあるとして労災と判断されれば、労基法の規定によって療養中の期間及びその後30日間の解雇が禁止されることになる。事例では、こうした煩雑な手続きを経ることなく、問題を解決しているところにあっせんの意義があるのではないだろうか。


申請人は、正社員として店舗で勤務していたが、申請人と数名の労働者に対する苦情が店舗に寄せられたことで、申請人だけが、突然、通勤困難な勤務場所への配置転換を命じられた。 会社から、配置転換の理由は勤務評価によるものとの説明を受けたが、今まで勤務態度等に関しての注意を受けたことはなく、この理由に納得がいかないことか ら配置転換の撤回を求め、あっせん申請した。あっせんの結果、申請人が配置転換前の店舗の別部門で勤務することで双方が合意し、解決した。


身体障害を有する申請人は、自身の能力に適職と思われる職務に就いていたが、事業主から同僚及び取引先との折合いが悪く、業務に支障を生じていることを理由に配置転換の命令を受けたため、元の職場に復帰することを求めてあっせんを申請した。あっせんの結果、事業主が申請人の身体障害に配慮した最適な職務に配置転換し、申請人は配置転換に応じて誠実に勤務に服することとして双方が合意し解決した。


Aさんは、前職を定年退職後、5年前に労働者数約20名ほどの工場に再就職した65歳の男性。昨年12月に家族旅行のため、5日間の有給休暇を取ったところ、その直後に突然社長から月給28万円の正社員から時給1400円のアルバイトに切り替えると通告さ れた。Aさんは有給休暇取得が原因でこのような措置を受けたものと考え、納得がいかないとして会社を退職した。あっせん委員が会社側に事情を聞いたとこ ろ、有給休暇を取得したことが原因ではなく、会社の業績悪化のためのリストラ対策であることを主張。Aさんが定年年齢を超えていること、日頃の勤務態度が 悪かったこと、他にも2名の労働者に対して指名解雇やアルバイトへの身分変更の措置を取っていること等を挙げ、今回の措置がやむを得ない措置であったこと を主張した。あっせん委員は、Aさんへの日頃の教育指導不足、アルバイトへの切替時にAさんへ十分な説明・説得がなかったこと等を指摘、その結果会社側は Aさんに給与2か月分を支払うことを約束、Aさんもそれで円満退職することに同意した。会社側の一方的通告で本人の誤解を生んだ事例である。やむを得ず労 働者側への労働条件の変更の措置を行う場合には、十分な説明が必要である。


Aさんは、ビル管理会社の事務員として約15年勤務している女性。その間上司の課長が3人代わっているが、現在の上司になってから、Aさんへのいじめ・嫌がらせが始まり、昨年暮れから強い退職勧奨を受けるようになった。1月になって、退職届を出すよう最後通告を受けたがAさんはこれを拒否。すると、会社側は、事務員のAさんを清掃業務へ配置転換すると通告し てきた。Aさんは思い悩んで労働相談の窓口を訪れた。相談員は事務員として長年勤務してきたKさんをいきなり本人の同意なく清掃業務へ配置転換することは 権利の濫用の可能性があると判断し、あっせん申請を勧めた。あっせんには会社側の弁護士も同席。あっせん委員は、今回の配置転換は実質的に解雇同然の扱い であり、その理由にも正当性が認められない、と指摘。会社側に何らかの対応を検討するよう要請した。会社側は弁護士のアドバイスもあり、Kさんに対して給 与6か月分相当額の解決金を支払うことに同意。Kさんもこれ以上この会社には勤務できないとしてこの金額で納得し退職することを決意した。当初は金額的な 面で折り合いがつかなかったが、あっせん委員が双方に裁判で争う場合の不利益を説き、最終的に、あっせんの場で円満に解決した事例。


某社会福祉法人に保育士として勤務していたが、幹部職員の入所児童に対する横暴行為を非難したところ、雑用業務に配置転換され退職を強要された。所管の調査により横暴行為の事実が確定されたことに伴い、あっせん委員からの保育士業務への復帰が妥当との教示を受け復帰することで解決した。


申請人は、「パートとして勤務していたが上司が変わり、意思疎通が出来なくなり、他の従業員に迷惑を掛けるようになった。そのため退職したが、これは職場の環境を改善してくれなかったことが原因であるので、その補償を求める。」としてあっせん申請が行われた。あっせんの結果、今後職場の環境を改善していくことと、解決金を支払うことで合意した。


申請人(労働者)は派遣労働者として派遣元事業場Aと1年間の有期雇用契約を締結し、被申請人である派遣先事業場に派遣された。当該契約期間が満了するに際し、被申請人に派遣されていた派遣労働者の内、申請人を除き契約更新が行われたが、申請人については「女性の喫煙が社風に合わない。」という理由で被申請人から差別的な取り扱いをされ、結果として派遣元事業場Aが雇止めを行った。申請人はこの差別的取扱いを不服として、被申請人である派遣先事業場に対し、慰謝料の支払いを求めて、あっせんの申請を行った。

申請人は、業務上で特段の支障なく勤務しており、喫煙についても被申請人のルールどおりに所定の喫煙場所で喫煙をしていたものである。以前より被申請人 の担当者から「女性職員が、所定の喫煙場所といえども公衆の前でたばこを吸うことは社風に合わず、お客さんに見られるとみっともない。」などと注意を受け ていた。女性である派遣労働者が喫煙したことを理由に、被申請人が派遣労働者を選別し、派遣元事業場Aに働きかけるようなことは認められず、これら一連の 被申請人の対応により被った精神的苦痛に対し、慰謝料の支払いを求める。
被申請人は、申請人が所属する派遣元事業場Aから4名、派遣元事業場Bから1名の合計5名の派遣労働者を受け入れていた。そして今般、業務が多忙になっ たことから、派遣労働者を6名とすることとし、当該派遣契約が満了するに際し、改めて派遣元事業場A及びBの2社から、3名ずつの派遣労働者を派遣しても らう契約を締結した。新しい派遣契約による3名ずつの人選には、被申請人は関与していない。ただし、従前より被申請人は、(1)申請人がしゃがんで喫煙し ている様子について外来者から苦情があったこと、(2)申請人が再三の注意にも拘らず制服の着用について業務命令違反を行ったこと、(3)遅刻・早退・欠 勤が頻繁にあったこと等を申請人に注意し、かつ派遣元事業場Aに報告を行っている。(1)については、被申請人の担当者が申請人に対し、外来者からの苦情 の事実を伝えただけで、「女性の喫煙が社風に合わない。」と発言し、女性差別をした事実はないと主張した。
申請人及び被申請人に個別面談の上、あっせん委員が紛争の経過について尋ねたところ、紛争の発端となった喫煙に係る事実関係の認識には隔たりがあり、ま た、被申請人は、申請人の雇止めについては全く関与しておらず、雇止めの判断は雇用主である派遣元事業場Aの決定であり被申請人には責任が無い旨を主張し た。紛争当事者双方の主張内容を踏まえ、あっせん委員は紛争当事者双方に対して、歩み寄りを求めたところ、双方ともこのまま争いを放置することは本意では ないとの意思の合致があったため、和解に向けて調整が行われた。あっせんの結果、被申請人は申請人に対して、和解金として○ヶ月分の賃金相当額を支払い、 一方、申請人は本件に関して第三者に口外しないことで紛争当事者双方が合意するに至り、合意文書を取り交わした。


申請人は部門責任者をしていたが、半年ほど、仕事が多く複雑な顧客対応も重なるということが続いた状況において精神的な病気になり、それまでどおり仕事を続けることができなくなった。会社に相談したところ仕事軽減してくれたが上司の対応も冷たくなり、仕事を続ける事ができなくなって自ら退職届を提出し て退職した。しかし、精神的な病気になったのは仕事も原因の一部であるし、会社の対応が冷たかったという思いから、会社に病気治療費の補償を求めてあっせ んを申請した。あっせん委員が、個別面談して申請人に当時の状況を聞き取り、併せて、会社側にも当時の状況を確認してもらったところ、相互の話がほぼ一致 し、その結果、会社側も仕事面で一定程度過重となっていたことを認めて、治療費の一部を補償することで双方合意し解決した。


ここに掲載しているあっせん事例は、各都道府県労働局のHPに掲載されているものを引用いたしました。詳しくは、各都道府県労働局のHPをご覧になってください。

Posted by kappa