社内的な問題解決に限界を感じたら

解決のための手段の選択

社内的な解決のための行動を起こしたにもかかわらず、何の解決の兆しもないような場合、何らかの社外的な解決手段を選択せざるを得ません。ここで大切なこ とは、状況に応じて手段を選択する、ということです。法的な解決手段には様々なものがありますが、どの制度にもメリットデメリットがあり、一概にこれが良 いと言い切れません。

まずは「あっせん」を

最近では、ようやく「労働審判」の件数も増え、まず「労働審判」を想起される方も多いと思います。しかしほとんどの労働審判で弁護士が代理人についている 実態を考えれば、ある程度のコストを覚悟する必要があります。もちろんこのコストの点だけで軽々に判断することは避けるべきです。しかし、私が社会保険労 務士だから、ということで言う訳ではありませんが、「あっせん」は、ある意味もっともソフトな外部の解決手段でもあり、費用がかからない点や、個人でも申 請が可能な点で、まずは「あっせん」を考えると良いのではないかと思います。ただし、注意すべきことも当然あります。

「あっせん」は話し合いによる解決の延長線上のものであること

よく言われることで、「あっせん」は強制力がない、という点ですが、確かに労働局の「あっせん」では、申請に対して成立するのはその約半分のようです。こ れは被申請者が「あっせん」に応じる義務がないことが大きな原因です。しかし、このことをもって「あっせん」による解決には効果がないと考えるのは、いさ さか早計です。「あっせん」は話し合いであるからこそ応じるのは任意なのです。つまりそれだけソフトな手段なのです。逆に言えば、「あっせん」が成立し た=相手が応じた場合には、極めて納得性の高い結論に到達する可能性が高い、ということも事実です。それは、くどいようですが、「あっせん」はあくまで も、当事者間の自発的な解決行動を前提にしているからです。このように考えると、「あっせん」の成立が約半分という結論は、半分以上の当事者が話し合いに よる解決を望んでいるともいえるわけで、悲観するようなものではないように感じます。

「あっせん」成立のための働きかけが重要

「あっせん」が話し合いによる解決の促進である以上、話し合いに応じてもらわなければどうにもなりません。労働局などへの「あっせん」の申請は、話し合い による解決の、いわば仲介の申し込みであって、その「あっせん」の場に相手に来てもらう、つまり「あっせん」に応じてもらうためには、応じてもらえるよう 働きかけることが、やはり必要だと考えます。それは、繰り返しになりますが、「あっせん」は話し合いによる解決である、ということは、社内的な解決へのプ ロセスに外部の第三者を交えることと、ほぼイコールだからです。相手側に「あっせん」のメリットを十分に理解してもらい、応じてもらえるよう「説得」する ことが重要なのです。

「あっせん」は当事者間にしこりが残りにくい

「あっせん」による解決プロセスに必要な説得活動は、問題解決志向の働きかけそのものです。これは裁判のように原告、被告の徹底的な攻撃と防御の応酬で決 定的な対立構造の中からどちらがシロか、クロかを裁判官に判断してもらうものとは全く異なります。話し合いに応じてもらえるためには、そして話し合いに よって解決するには、相手方にもメリットが無ければなりません。そんなときに、相手方を攻撃することなど、「あっせん」による解決には、考えられません。 どちらが悪いとか間違っているとか、「犯人探し」をしたところで、何の解決にもならないからです。これからどうするのか、という議論こそ問題解決志向であ り、「あっせん」の真骨頂であると思います。「しこりが残りにくい」というのは、こうした構造的なプロセスそのものによるものでもあります。

「あっせん」での主張はシンプルに

「あっせん」は、たった一回の期日で問題解決を図ろうとするものですから、ポイントを絞ってわかり易く主張をまとめることが大切です。逆に、あまりに複雑 な事案で、事実認定が困難で、その確定に時間がかかるような問題や難解な事件の場合には、訴訟を活用するほかないでしょう。あまりに専門的技術的に高度な 判断が迫られる微妙な事件のような場合には、話し合いによる解決である「あっせん」では対応できません。というよりも、話し合いによる解決自体、まず不可 能でしょう。問題を客観的具体的に捉え、それをシンプルにまとめることができることが必要です。

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あっせんで満足できる結論を導くためには

あっせんによる解決は、労働審判や訴訟による場合よりも、解決金の額が少ないことが指摘されますが、その一つの理由は、それは相手の合意が前提になってい る仕組み上、ある程度は致し方ないのかもしれませんが、費用対効果を考えた場合には、必ずしもあっせんの方が不利とは言えないと思います。もう一つの理由 は、実はこちらが重要なのですが、あっせん申請をする際に、とくにご自分で申請をされる場合に、法的な根拠をもって要求事項に対する主張ができていないこ とがあります。あっせんは話し合いによる解決制度とはいえ、何の根拠もなく合意点にたどり着くことはできません。その合意点に至るプロセスを左右するの が、法的な根拠のある主張です。あっせんで有利な結論を引き出すためには、まずあっせん委員の心証形成を、自分にとって有利なものとすることが不可欠で す。そのためには、どれだけ法的な根拠をもって、しっかりと主張を展開できるかにかかっています。しかし労働局のあっせん申請書の様式では、状況を細かく 書くことは、そのスペースの制約から、ほとんど不可能です。そのため、要求事項に対する理由について、陳述書とか、意見書といったもので、法的な根拠に基 づく主張を展開する資料を別に提出することが必要不可欠です。しかし、労働法的な根拠をもって主張することは、労働法に精通している方でなければ、なかな か難しいでしょう。陳述書の作成を依頼したいとお考えでしたら、直接メールでご連絡ください。

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