この問題については、実は法的には決着がついています。そもそも退職は、これは労働契約の解除、ということになりますが、契約の解除は、契約当事者の一方的な意思表示で適法に成立します。ですので、退職させてもらえない、という問題はあり得ないことになります。
ですが、「退職させてもらえない」ことにお悩みのあなたは、上司などに退職の意向をお伝えになったところ、それは認めない、と言われてしまい、途方に暮れている、というものではないかと思いますが、これはあなたが「同意」退職を求めたが、「同意」してもらえない、という問題であるということになります。
ということは、あなたが会社の「同意」を得て退職したい、という意向にこだわらなければ、問題は解決することになります。おそらくこうした内容については、ネット上に様々な情報が蔓延しているのではないかと思われることと、上記のとおり、そもそも問題ではないという点で、あえて触れてこなかったのですが、退職したいけれど、上司が退職を認めてくれない、というご相談が、残念ながらまだまだ多いことから、あえてここにコメントを書くことにしました。
翻意を求められているのか、退職を拒否されているのか
これは紙一重ですが、翻意を求められている、ということは、
「あなたは貴重な人材だから、どうか辞めずにこのまま残ってほしい」
と懇願されているのか、あるいは、
「退職なんて冗談じゃない。お前の採用にいくら掛かっていると思っているんだ。退職するなら損害賠償を請求する」
などと退職することがあたかも極悪な所業であるかのように、拒否する意思を示されているのか、そのいずれかかと思いますが、おそらくお読みになっているあなたが直面しているのは、後者のケースではないでしょうか。
前者のように、翻意を求めれているのであれば、いささか鬱陶しいと感じたとしても、もし何かの機会に、ブーメランガーとして戻ってくることもあるとするならば、あまり邪険にするのは考え物でしょう。評価をしてもらえることをに感謝の意を示されたうえで、丁重にお断りをされればいいと思いますし、もし機会があればまたお世話になることがあるかもしれませんので、その時にはよろしくお願い致します、とお告げになっておかれればと思います。
それに対して、血も涙もない奴だ、とか、義理人情が分からないのか、などと憎まれ口をたたかれたとしても、その上司の器の大きさを図る材料にするにとどめ、反論などはせずに心に収めておくことが賢明でしょう。
同意退職にこだわらないならば…
そもそも退職したいという社員を、
「辞めるなんて冗談じゃない、ふざけるな、辞めるなら後任を探して、引継ぎを済ませなければ認めない」
などという対応自体が、如何に無意味な嫌がらせか、発言者本人は全く自覚していません。上述の通り、あなたが辞めると言えば、適法に辞めることができるからです。
ですが、頑として退職なんか認めない、という姿勢を一貫させる上司に対して、あなたはどう対応すればいいのか、お悩みになっているわけです。ですが、繰り返しになりますが、上司が何をどう言おうが、あなたの
「辞めさせて頂きます」
の一言で、全ては解決する問題ではあります。
ですが、その後の仕事はどうしようか、とか、同僚に迷惑をかけることになる、それでもこれまでお世話になった会社を一方的に辞めるのは忍びない、何とか穏便にならないものか、などとあなたはお考えになっているのではないでしょうか。
本当であれば、あなたのような人材を会社を大切にしなければならなかったわけで、なぜ退職しなければならないような状況になったのか、退職という決断をしなければならなくなったのか、その原因は多かれ少なかれ会社にあるのではないでしょうか。特にあなたの退職を執拗に批判する上司は、あなたの離職によって自分の管理職としての責任を問われかねないことだけを考えているのではないでしょうか。しかもその上司がこれまであなたに対して、有形無形の嫌がらせをして、あなたが退職せざるを得なくなったとすれば、どうしようもない上司であって、同意退職などにこだわる必要は全くないのではないでしょうか。
退職したいという意向を示した社員に対して、脅して、批判をして、退職をを認めない、などと公言する上司に対しては、同意退職など望むべくもない、というより、そもそも同意退職を求めるような相手ではない、ということではないでしょうか。
退職をしたい、という意向に対して、上記ような対応をすること自体、ありえないことであって、極めてまれな事態です。あなたとしては、そのようないわば事故にあってしまったと割り切って、同意退職などにこだわることは全くない、と思います。
退職の意思表示の方法
できるだけ穏便に、とお考えであれば、まずは一応、あなたの退職を執拗に拒否する上司に対しても、退職届をお出しになると同時に、その上司のその上の上司に、また、人事部等の人事に関する部署がある場合にはその人事関係の部署、人事等が無い組織であれば、直接経営者になるのかもしれませんが、上司が受領を拒否することをお伝えになったうえで、退職届をお出しになればと思います。
退職届の拒否が、上司個人の感情的な問題であるとすれば、ここで問題は解決します。会社との間では、平穏な解決が図られたことになります。逆に、上司から退職届の受領を拒否されたことをもって、いきなり人事に、あるいは経営者に対して、後でも触れますが、内容証明郵便で退職の意思を示したとすれば、いったい何ごとだ、ということになるのではないでしょうか。段階を踏む、ということが大切かと思います。
ですが、もしここでも退職届の受け取りを拒否された場合、それが経営者である場合には、一方的に意思表示をしたことを示す事実が残る方法で、退職の意思をお示しになることを考えなければならないかもしれません。
冒頭で書きましたが、退職は、あなたの一方的な意思表示で適法に成立することから、意思表示をすれば問題は解決するわけですので、問題はその形に残る方法です。
手軽なところでは、退職をお告げになるメールを送り、それに対して、退職まかりならん、という返信があった場合には、ここで意思表示が会社側に伝わったことを示すことになります。
もっと確実に、ということであれば、内容証明郵便で退職の意思をお示しになれば、間違いないことにはなります。ですが、この内容証明郵便は、相手に対して、有無を言わせずに「どうだ」と迫るものですので、状況をお考えになる必要はあるかと思います。金輪際関わることが無い相手とか、全くお話にならない相手であれば、選択肢の一つかと思います。
ですが、退職をどうお告げになるかでお悩みになっているあなたに申し上げたいことは、お辞めになる際に、何も言わずに行方不明になってしまう人もいる、ということです。退職届も出さず、いきなり欠勤をするというのは、業務に支障があるということだけでなく、これはただの無断欠勤なのか、退職したいということか、それによって社員としての地位についての手続きが滞るという問題もあり、会社にとっては大迷惑なのですが、そんな風に辞めていってしまう人もいる、ということをお知りになれば、どう退職すればいいかについて真摯にお考えになるあなたは、会社に対してすでに十分に誠意をお示しになっているとお感じになるのではないでしょうか。
あなたの退職届に対して、退職などけしからん、などと言うような相手に対しては、むしろ退職の意思表示もせずに、さっさと消えてあげればいいのです。とあえて申し上げる意図は、ここまでお読みいただいたあなたは、きっと退職届について、もうお悩みになることが無いことを期待したいからです。
具体定な対応方法については、こちらからご相談ください。