やりがい搾取

2023年10月18日

サービス残業を正当化する「お金がすべてじゃない」

お金がすべてじゃない、という言葉を経営者が発することほど説得力ないものはありません。本当にやりがいがあると思える仕事であればともかく、つまるところ賃金の支払いをできるだけ抑えるための方便であるとすれば、サービス残業の強要以外の何物でもありません。

「君のためを思って…」は、後ろめたい気持ちがあるから

パワハラ上司が恩着せがましく「君のためを思って…」などと言い訳を並べるのと同様、責任ある仕事を君に任せる、とか、君の能力を大いに発揮してほしい、などと心を揺さぶられるような言葉とは裏腹に、過重労働に見合わない低賃金労働に対する同意を得るための甘言にすぎないかもしれないのです。騙されてはいけません。

何かおかしい、という感覚を持つことの必要性

やりがいがあれば労基法違反も許される、などという理屈は通りません。ここで、何かおかしいぞ、というごくごく当たり前の感覚を持ち合わせておくことが大切なのです。

「経営者感覚で仕事をしろ」は、経営者への忖度の強要

経営者感覚で仕事をしろ、というのは、何でも指示を待って自発的に動かず、責任感のない仕事に対する叱責です。仕事で成果を上げることは、会社にとっても従業員にとっても価値のあることだ、という意味で、自分のために仕事をしろ、などといわれたります。成果が上がれば、それに見合った報酬が予定されている、それだけでなく、自分自身のスキルアップにつながるのだ、ということなのでしょう。

しかし実際に「経営者感覚で…」、という紋切り型が、会社の意図を組んで、経営者の気持ちを理解して、ということであるとすれば、誤解を恐れずに言えば、つまるところ「会社には逆らうな」と言っていることと同じ、ということになるのではないでしょうか。

正社員になる条件として、労働条件の切り下げを求められたときに考えるべきこと

不利益に変更された契約更新に応じたが、待てど暮らせど「正社員」などと言う言葉はどこからも出てこない。おそるおそる、あの話はどうなったのか、などとそれとなく聞いてみても、要領の得た返答などどこからも返ってこない、それどころか、「そんな話があったかな」ととぼけられるか、あるいは「その話は無くなった」などと開き直られることも…もうこんな甘言に騙されるのは止めましょう。本当に正社員にすることを条件にするのであれば、きちんと契約書面に、いつ、どのような条件で正社員にする、とはっきりと書かせることです。

【参考コラム】賃金減額

上司に真意を語らせる

ですが、そのようなことをはっきりと求めれば、上司から、あるいは人事から、あまり好ましくない社員と思われるのではないか、などと考えてしまうのではないでしょうか。これは伝え方の問題でもあります。いきなり労働条件通知書に、〇月〇日から正社員とする、と明記しろ、とお求めになることはいささかハードルが高いのであれば、

「どのような条件が整えば、正社員になるのでしょうか」

とか、

「どのくらいの期間で正社員になりますか?前例などがあればおしえてほしいのですが…」

などとお聞きになってみることです。ここで

「今取り組んでもらっている技能試験に合格すれば正社員だよ」

とか、

「来春には、君も含めた数名を正社員にすることになっている」

などと、具体的な条件や期間がさっと回答されれば、それなりの用意があることが見て取れるかもしれません。もちろん即答があったとしても、

「それは君次第だよ」

とか、

「君なら、どんな条件が必要だと思う?」

などと逆に質問で返してくるようであれば、そもそも正社員の話など、全く考えられていない可能性もあります。

質問に対して質問で返すのは、質問に答えられないから

そもそも、質問に対して質問で返すなどという対応は、話し合いの内容をうやむやにして、すぐに終わらせる、あるいは話の本題をすり替えるときの常套手段です。このような対応を平然と、自然と口をついて出てくるような上司は、要注意でしょう。万事において口先で言いくるめることしか考えていない、相当に胡散臭い人物であるとも判断できるのではないかと思います。

約束が反故にされ続けている場合

正社員にする、次の昇進昇格は間違いない、などと言われ続けながら、直前になって、

「申し訳ない、今回は泣いて欲しい。次は必ず…」

などと毎回のように弁解され続けているとすれば、その上司あるいは人事担当者の対応姿勢が、表向きとても誠意がある者であったとしても、そもそもそうしたことは一切考えられていない可能性もあるのではないでしょうか。ここであなたが、

「これでもう〇回目です。私は何を信じていいのか…」

などと口にしてみたときに、もしその上司が逆ギレしたり、激高するようであれば、その推測は確信に変わったと言っていいかもしれません。泣き落としはお芝居だった、ということです。

具体的な状況に応じた対応方法については、ご相談メールをお送りください(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。

【参考コラム】問題解決のための行動に一歩踏みだす前にお読みいただきたいコラム~解決行動を起こす前に考えるべきこと

Posted by kappa