最低限抑えるべきパワハラ対策の考え方

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パワハラ対策としてまず挙げなければならないものは、形式的ですが、パワハラ防止規程の整備でしょう。パワハラ防止規程を備えている企業も多いと思います が、パワハラ防止規程は無くとも、就業規則上の服務規律や懲戒規程に、パワハラを禁止する旨の規定があるのではないでしょうか。それに加えて、パワハラに 関する理解を深める研修や、それ以外にも様々な対策をお考えのことと思います。これら具体的な最低限抑えるべきパワハラ対策について考えてみます。

パワハラ防止規程は必要か?

パワハラ防止規程は、本来パワハラを未然に防止することを目的とすべきものです。規定内容には、パワハラ発生時の対応や、パワハラ加害者に対する処分規定 (就業規則の懲戒規程に含まれるものなど)も含まれます。これは発生時の対応ではあっても、未然防止という意味では、とても大きな意味を持ちます。それは、一つには発生時の処分を規定しておくことで、パワハラ行為に対する牽制効果を期待するものです。そしてもう一つは、これが肝心なのですが、実際にパワ ハラが発生した場合に、その解決プロセスに沿って、客観的な処分が行われることで、パワハラ行為に対する強い牽制効果と、パワハラは認められないという実態を職場に浸透させることができるという、極めて大きな意味があります。

運用実態の伴わないパワハラ防止規程はいらない!?

パワハラ防止規程の重要な効果は、パワハラの未然防止としてのパワハラ行為に対する牽制効果にあるのですが、いくら厳格な規程を作成したとしても、確かに それによっていくばくかのパワハラ行為に対するけん制効果もあろうかと思います。

しかし、規程を作成したしたものの、規定通りの運用がなされなければ、パ ワハラ牽制効果どころか、パワハラ防止規程には実態がなければ、従業員は、会社はパワハラ防止に消極的なのかと疑心暗鬼になるだけでしょう。こうした職場の雰囲気はパワハラに対する黙認を生み、パワハラに甘い職場を作り出してしまいます。そして一度できてしまったこうした職場風土は、容易には変えることができません。

法的リスク回避のみを目的としてパワハラ防止規程なるものを作成するむきもありますが、せっかく作成したパワハラ防止規程を作ったままにせず、運用実態の伴ったものにすることが大切であることは言うまでもありません。

形式だけのパワハラ規定が、会社の責任を問う

実態のないパワハラ防止規程では、パワハラの未然防止はできませんが、たとえ形式的ではあっても、パワハラに関する規定があるために、会社の責任が免れなくなることがあります。もし、そのパワハラ規程に規定されたパワハラに該当する問題が発生した場合、会社はそこの規定された様々な措置や対応を迫られる、履行する義務があることになります。パワハラなどどこ吹く風とばかりにパワハラをまき散らす管理職らに対しては、この規定を根拠に処分をしなければなりません。

コンプライアンス窓口に対する誤解

何らかの問題が発生した場合に、会社にコンプライアンス窓口などの相談窓口があるときには、まずこうした相談窓口に相談者は相談すると思われます。直属の 上司や所属長などに相談する場合もあると思いますが、彼らが問題の当事者である場合や何らかの形で問題に関与している場合など信頼関係に問題があるときに は、やはり第三者的な立場にある相談窓口が利用されることが多いでしょう。

ここで従業員と会社に間でよくある誤解は、問題のを相談する従業員は、コンプライアンス窓口に相談すれば問題が解決できると思っていることです。たいていの場合、コンプライアンス窓口などの相談窓口には問題を具体的に解決する役割が与えられていることはまれであるという点です。御社ではどうでしょうか。極端な場合、話を聞くだけで、何もしない相談窓口もあり ます。しかし一方で、相談者は相談窓口が問題を解決してくれるという大きな期待を持っています。

相談窓口にどのような問題解決への助力をしてくれるのか、 その役割を明確にすることともに、少なくとも実効性のある問題解決策を講じることができる部署や担当者へ、直接関与できるような役割を持たせ、名実ともに 平穏迅速な解決能力のある相談窓口にすることが重要でしょう。間違っても、社内の不平不満分子のブラックリスト作りの役割を持たせるようなことはあっては ならないものであり、会社自身が、ブラック企業のそしりを免れないものです。

パワハラ防止研修は目的を明確にすることが重要

法的リスク対策という面からもパワハラ防止研修を実施することが増えていますが、パワハラ防止規程と同様、形式的なものであれば、する意味が無いとまでは言いませんが、従業員の期待や信頼を裏切るようなことになる場合、実態のないパワハラ防止規程と同様の影響が考えられます。仮に形式的に実施するとして も、その目的を明確にしたうえでパワハラ防止研修を実施すべきでしょう。その目的がなんであるかの是非はともかく、目的が不明確であったり、

また、目的が明確であったとしても、その目的に沿った内容の研修でなければ、職場に混乱を招くだけです。そもそもパワハラ防止研修は、パワハラを未然に防止することが 目的であるはずですが、本当にそうなっているでしょうか。そしてその実効性はあるのでしょうか。

パワハラ監視委員会!?

パワハラを未然に防止することを目的に、パワハラを監視する組織を作るという例もあるようです。特にパワハラが大きな問題となった組織や、パワハラに対す る危機感が強い会社が、パワハラの未然防止をより実効性のある対策として打ち出すものですが、こうした従業員を監視するようなものは、期間を限定し、特定 の問題の解決のみをターゲットにするなど、その焦点をできるだけ絞ることが重要でしょう。監視カメラを設置するような場合でも、特定の問題の解決を目的 に、限定的な活用のとどめるべきがと思います。どのような形態にせよ監視体制を恒常的に置くことは望ましいものではありません。

お題目を唱えるだけでは、効果が期待できない

パワハラの問題を喚起することは重要ですが、問題についての周知にとどまり、実際のパワハラ行為に対しては何ら実効性のある対策を講じなければ、運用実態 の伴わないパワハラ防止規程と同様、「パワハラはいけません、パワハラは止めましょう」、というお題目を唱えながら、パワハラを黙認していては、パワハラ が無くなるどころか、逆にパワハラが増えることになるでしょう。ポーズだけで実態の伴わないパワハラ防止宣言は必要ありません。

一方、何でもパワハラといいたがるモンスターに対しては…

パワハラ防止対策というと、パワハラ行為をさせないための対策しか出てきませんが、パワハラのもう一方の当事者(あえて被害者と書きませんが)に問題があるケースも相当あるはずです。こちらの対策も考えなければ片手落ちでしょう。パワハラの言動をけん制するための措置と同時に、そうした言動が無くても、自分に都合の悪いことは何でもパワハラといいたがる従業員に対しても、何らかの対応策を考えておくことは重要です。

採用直後の対応がカギ

もともと何らかの問題を抱えている従業員は、採用直後から様々な問題を引き起こしますので、新入社員だからといって大目に見る、という対応は、業務上の不慣れによるものに対するものに限定すべきであって、基本的なマナーであるとか、社会人としてのルールなどについては、黙認せずに細かく注意指導をすることです。それに対して、早速パワハラ云々を主張する場合には、その考え方は全く失当であることを説明しておくことが大切でしょう。もっともそうした話にも耳を傾けることができないような状況もあろうかと思われますが、会社としては、あえてそれを伝えること自体に意味があります。こうした注意指導に対して改善の余地が無いようであれば、これが試用期間であれば本採用拒否の重要な理由になります。

しかし、教科書通りの対応であれば、確かに法的には問題がないかもしれませんが、もし発達障害などのメンタル面での問題をその従業員が抱えていたとすれば、そうした対応は深刻なトラブルに発展するリスクがあります。その前に、合理的配慮の提供義務についても、考えておかなければなりません。次のようなケースについても、同様に考えなければならないでしょう。

言語明瞭、意味不明瞭…?

問題の指摘は、一つ一つはもっともでもあり、具体的な解決を求められているのに、何か釈然としないと感じることがあります。その理由は、指摘された問題の裏に隠れた問題の本質が全く別のところにあるから、というケースも多いと思います。たとえは適当ではないかもしれませんが、(いわゆるブラック企業がよく使う…!?)自主退職を迫る材料として、重箱の隅をつつくようなミスを、これでもかと指摘して、だからお前はダメなんだ、これからどうするんだ、と暗に退職を迫るような場合と極めてよく似ています。

自分の立場が職場で不利な状況になってきたり、自分の思うような方向に向かわなくなった、などのストレスから、職場の中での誤解や無理解が生まれ、コミュニケーションに問題が生じ、さらに職場での孤立化が深まり、この悪循環がトラブルへと発展させることもあるでしょう。こうした場合に、本人は、自分に問題があるなどとは全く考えません。自分は会社から、職場から、阻害されている、こんなにひどい目に遭っている、こんなこともあった、あんなこともあった、これはパワハラだ…などと訴えるでしょう。ですが、ここで指摘された問題の言動の数々からは、問題の本当の原因は見えてきません。自分の立場を正当化するための材料でしかないからです。この問題の本質的な原因は、コミュンケーション能力の欠如にあると言えます。

ベテラン社員のモンスター化には理由がある

一方で、ベテラン従業員が、環境の変化をきっかけにモンスター化することもあります。これはいきなりその本人が変わったのではなく、そうした状況に今まで遭遇したことがないために、その本性が見えなかっただけである可能性もあります。

例えば、これまで部下を持たずに自分の能力を思う存分発揮できる業務に邁進していたが、今後は会社の将来を担う人材だから、として管理職としての立場で部下を持たせたとたんに、トラブルが頻発し、部下が次々と離職、パワハラ常習犯というレッテルがついてしまった、というケースが考えられます。

会社にとってのリスクは、その環境変化の合理性判断で、会社からの何らかの指示命令が無効であると判断されかねない余地がある場合です。

「敵か、味方か?」で問題を考えている

モンスターは通常冷静な話し合いができないので、トラブルが深刻化した場合には、法的な判断を基に、毅然とした対応を取るほかないという面もあります。割り切ってお考えになることも大切ではないでしょうか。実は、このサイトから受ける(被害者であると申告される方からの)ご相談に対して、これこれしかじかの事実関係については法的にはパワハラには該当しないのではないかという旨の返答をするなど、相談者の解決方針の変更をアドバイスした場合に、「相談をして損をした」とか「お前は会社側か」などという返答をわざわざ返信される方もおられます。つまり、どのように問題を解決するかという視点ではなく、自分にとっての敵か味方か、という視点で問題を考えているので、自分が100%正しいことを前提にしているともいえ、この段階では、もはや話し合いによって妥協点を探るなどというプロセスは意味が無いとも考えられます。実際にこのように考える方は非常に多いのではないでしょうか。信頼関係の修復には相当な時間と労力を覚悟する必要があると思います。

ただ、このような状況に至る前に、会社がその従業員にどのような対応をとっていたのか、おそらくは何か配慮に欠ける対応があったのではないかと考えられます。その初期の段階で、何らかの対応を施していれば、多少は話し合いによる解決の余地もあったかもしれないと思われる事例もあります。いずれにしても、トラブルは早い段階で対応することが何よりも重要といえるのではないでしょうか。

仕事のできるモンスターは職場環境を変えることで解決する

会社に配慮が欠けるといっても、特に他の従業員と同様に扱ってきたのに、なぜ…という思いもあろうかと思いますが、モンスター化する従業員は、そもそもそうした特徴であり、性格を持ち合わせていた、と考えれば、この問題の解決は、適材適所の配置にあることが見えてきます。

特に、これまで優秀だった社員が、配置転換等をきっかけに職場で問題を多発するようになったような場合は、その配置転換によって自分の思い通りの仕事ができなくなったことが原因と考えられます。つまり能力を発揮できる仕事や職場が限定されている可能性があるということです。

こうした従業員に対しては、その専門性を十分に発揮できる仕事や職場に専念させる方が、より効果的な人材活用であるといえるでしょう。

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