パワハラ防止研修の問題点

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副作用の大きい管理職研修

パワハラ防止研修として、通常会社内で行われるものは、パワハラ加害者予備群として考えられる中間管理職を対象とするものですが、そもそもパワハラとして問題となる言動を行うのは、一部の管理職に限られていることを忘れてはいけません。常日頃からパワハラを含めた部下の管理に気を配っている管理職は、パワ ハラ問題の加害者とされることは極めてまれで、むしろそうしたケースではパワハラを申告した従業員の言動に注意すべきかもしれません。パワハラが声高に語 られることで、管理職は部下にどう接していいのか、分からなくなっているのです。あれもダメ、これもパワハラになる、というパワハラ研修では、職場が機能低下に陥 る可能性すらあるのです。安易なパワハラ防止研修は百害あって一利無しということを、しっかりと認識しておく必要があります。

パワハラ体質の管理職は、そもそもパワハラが理解できない

たいていのパワハラ防止研修は、管理職に対してパワハラの加害者とならないよう注意を喚起するものですが、残念ながらパワハラの加害者になる可能性の高い 管理職は、そもそもパワハラが問題であることを現実の問題として理解していません。というよりも理解できないのです。パワハラ防止研修の担当者が、パワハラ加害者の張本人であるという笑えない話すらあるのです。講師として出てきた人物が、実は部下にパワハラをしていた、などという研修で、誰が耳を傾けるでしょうか。パワハラの加害者としてたびたび問題になるような管理職に対しては、教育研修によって果たして改善するのかどうかという見極めと併せて、人間関係に対する能力の欠如を疑う必要もあるでしょう。適材適所の問題でもあります。

加害者にならないための研修は職場を混乱させる

つまり、あれもダメ、これもパワハラになる的な研修では、大多数の管理職を萎縮させる効果しかないのです。パワハラの未然防止は、会社が組織として毅然とした立場をとることが重要で、従業員からパワハラといわれないようにしよう、という意識だけでは、むしろモラルの低下を引き起こすことになりかねませ ん。当たり前のことですが、強く叱らなければならない従業員に対しては、強く叱らなければなりません。同時に、パワハラを行った上司に対しては、毅然とし た処分をすべきなのです。会社がそうした毅然とした姿勢を見せることは、パワハラ研修を行う以上に大きな効果があります。そうした意味で、やはり研修を行うのであ れば、パワハラ防止対策をしましたというエクスキューズとして行うのであれば(その是非はともかく)別ですが、これまでのパワハラ研修に対する考え方を根本的に変える必要があると思いますが、どうでしょうか。

パワハラ防止研修は被害者予備群の従業員に対してすべきもの

パワハラ被害者予備群の従業員に対して行うパワハラ防止研修では、どうすればパワハラの被害に遭わないか、などという「これはダメ、こうすると良い」的な被害者に問題 があることを前提にする内容の研修となりがちですが、こうした研修でパワハラが防止できるのでしょうか?むしろ、パワハラの未然防止というよりも、パワハ ラを受けたときにどうすればいいかという研修のほうが、一般社員は関心があり、また効果的です。もっとも、これではパワハラがあることを前提としているよ うだということで、あまり積極的に取り入れられない向きもありますが、大半の会社でパワハラが存在することが公然の事実となっている今日、いまさらそんな ことを気にするよりも、パワハラによる深刻なトラブルをいかに防止するかを考えるほうが、より建設的であり、リスク管理の面でも、極めて重要です。こうし た意味で、管理職に対するパワハラ防止研修よりも、広く従業員に対して、パワハラにあったときの対処方法を研修しておくことのほうが、はるかに有意義であると考え ます。

但しここにも注意が必要で、何でもパワハラと結び付けて問題と考えたがる従業員に対するけん制をする意味でも、これはパワハラになる、これはパワハラにならない、という内容がむしろ管理職に対するよりも効果があると思われます。なぜならば、パワハラになるかどうかの判断について積極的な関心があるのは、被害者予備群の従業員だからです。

パワハラ防止がお題目の自己啓発セミナーという実態

パワハラ防止研修の内容は、パワハラとなる言動についての理解に加えて、加害者予備群に対しては、どうすればパワハラといわれないか、とか、被害者予備群 に対しては、どうすればパワハラされずにすむか、など、結局はコミュニケーションの方法や人間関係の考え方、そして相手に不快感を与えない言動や立ち振る 舞いなどに至っては、その実態はビジネスマナー研修や自己啓発セミナーのようです。確かにパワハラの未然防止という目的を考えれば、パワハラをしない心の 状態とか、パワハラをされないような隙を作らないなど、パワハラ発生以前の問題を取り上げることにならざるを得ないことになります。こうした研修がパワハ ラ防止に全く効果がないとは言いませんが、お世辞にも問題解決に対して効率的とは思えません。こうした人間形成のための研修をじっくりと行う余裕がある企 業は別としても、パワハラに限らず職場の問題は、どんなに未然防止のための対策を尽くしたとしても、なくなることはありえません。大切なことは、問題発生 時の適切な対応ができるようにしておくことです。実はこれが未然防止に効果的な抑制力となるのです。

パワハラという問題への理解を深めることが研修の目的

そもそもパワハラという問題は、パワハラという抽象的な文言が独り歩きをすることから始まります。そうした問題が起こるのは、パワハラとは何かについての理解が不十分であることが原因ではないかと思われます。パワハラへの理解は、まずパワハラという問題が、具体的に、どのような場面で、どのような形で起こるのか、職場の状況に則した理解をしてもらうことから始まります。その根拠となるのは、パワハラ防止規程であり、それに伴う懲戒規程です。そして、その具体的なケースの問題の発生から解決に至る社内的なプロセスを説明します。加えて、会社外の行政による解決制度などへの発展した場合のプロセス、訴訟になった場合の影響などを、具体的に説明します。一方で、被害者のメンタル面への影響を考えることも重要です。以上のようなパワハラ問題の深刻化のプロセスを理解してもらうことが、問題の未然防止につながる「パワハラへの理解」ではないかと考えます。

研修を受けている従業員にとっても、今更聞き飽きたパワハラの抽象的な定義などを説明されても、関心をそそられるものではないでしょう。パワハラという問題への危機意識を持ってもらったうえで、どうすればそうした問題を起こさずに済むか、万が一起こってしまった場合にはどう対処すればいいのか、状況に応じた検討をすることが最も大切かと思います。

ロールプレイングに緊張感を与える方法

管理職向けの加害者にならないための研修では、当然参加者は管理職のみですから、管理職同士でロールプレイングをしても、○○さんの部下役はよかった、とか、○○さんの上司役の演技は迫力があった、などその役者ぶりばかりに注目が集まってしまい、最後は拍手で終わるに至っては、果たしてこれでよかったのか、と首をかしげたくなることもあります。同じ悩みを持つ管理職同士の気の置けない研修という意味もあろうかとは思いますが、参加者を特定せず、上司や部下を交えての研修とすることで、緊張感を挙げることができます。特にロールプレイングでは、実際の上司と部下の関係で行うと、緊迫感が格段に上がります。ただし、この場合にはシナリオ作りを綿密に行い、最後はハッピーエンドになるようにしておかないと、状況次第では本当のトラブルになるリスクがあることに留意しておく必要があります。一方で、これが上手く進行すれば、感動と涙のフィナーレを迎えることができるでしょう。

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