明日から来るな、と言われた…解雇!?

2023年10月18日

上司の「クビだ」発言は、感情的な失言と考えるのが妥当

まず解雇トラブルで気をつけなければならないのは、本当に解雇なのかどうか、という点にあります。例えば、上司からのいきなりクビだ、と言われたとしても、それは解雇通告とは言えない場合があります。というより、一般論として解雇通告とはとても言えないでしょう。上司の感情的な発作、とお考えになることが妥当な状況ではないでしょうか。

ですが、「クビだ」といわれて、はいそうですか、などと聞き流し、翌日平然と出社することも癪に障る、とお感じになるのであれば、

「それは解雇ということでしょうか?」

とお聞きになることです。まず「そうだ」という回答はないでしょう。もし仮に、本当に「その通り、解雇だ」という回答であった場合には、

「では、いつから解雇なのか、解雇通告を書面でください」

「解雇理由証明書を交付してください」

とお求めになってください。ここで本当に書面がさっと出てくるとは思えませんが、万万が一、書面が出てくれば、解雇である、とお考えにならなければなりません。解雇であることが確定すれば、次にあなたがお考えになるべきことは、解雇の撤回をお求めになることになります。

「辞めて欲しい」は、単なるお願い

また、よくあるのは、辞めて欲しい、とだけ言われたことを受けて、本当に会社を辞めるようなケースです。この場合は、解雇ではなく、会社からの退職勧奨に応じたもので、合意退職とされるものです。会社から、「辞めて欲しい」と言われたということは、あなたに対して、自発的に退職して欲しい、という会社の意向を伝えられただけだからです。

【参考コラム】退職勧奨にどう対応づべきか

ですから、あなたに退職の意思が無いのであれば、

「退職の意思はありません」

と、はっきりとお伝えになることです。それに対して、このままでは君の仕事がなくなる、とか、こんな仕事をしているようでは、賃金減額は避けられない、などとあなたに追い打ちをかけるかもしれません。

【参考コラム】賃金減額

これはもうリストラです。この話を止めさせるためには、あなたは

「退職の意思はないので、退職勧奨はしないで欲しい」

とお告げになることです。ちなみにこうした合意退職であっても、雇用保険法上は、会社都合の退職とされます。

解雇か否か、で解決行動は全く変わったものになる

以上のように、あなたが解雇だと思っていたとしても、実は解雇ではない場合もあります。解雇かどうかが不明確な場合には、会社に対して、これは解雇なのか、はっきりとした回答を求めることです。それによって、解決のためのプロセスが全く変わってしまうからです。

もしも、「解雇である」、と答えたとすれば、会社としても十分な根拠を持って解雇を有効と主張できるような準備をしていると考えられます。

一方で、解雇であることを否定しているのであれば、それは単にその発言をした上司の個人的な希望や思いにすぎないのですから、聞き流せば済むものです。しかしその言動がクビだというだけでなく、業務とは関係のない誹謗中傷を含む場合には、パワハラに該当する可能性がありますから、その点は別途問題にする必要があるでしょう。

上司の感情的な解雇通告に対して…

ついつい口から出まかせの解雇通告を上司がしたのであれば、聞き流せばいいとは言っても、あなたにとってはまだ心拍数が下がらないかもしれません。感情的に腹が立ったからと言って、軽々に「クビにする」などと口にする上司には、何らかのお灸が必要ではないでしょうか。

【参考コラム】上司や同僚の暴言

その前に、軽々に「クビにする」などと口にする上司は、今回は自らの言い過ぎを自覚して、素直に収まるかもしれませんが、また同じことを繰り返す可能性はないでしょうか。あるいは、次は「懲戒処分だ」と言うのかもしれません。

【参考コラム】懲戒処分を告げられた

「クビにする」発言については、発言そのものを問題として、今後はこうした雇用不安をあおるような発言をしないことを約束させておくことが肝要ではないでしょうか。もっともこれはあなたご自身がすることではなく、人事等に問題の解決を求めることで、人事判断として会社が対応するもの、ということにはなります。

解雇であることを会社が認めている場合

解雇であると会社が明言しているのであれば、あなたがすべきことは、解雇の理由を説明するよう求めることです。この理由については書面で求めます。理由の証明書は労働基準法上、会社の交付義務が規定されています。会社は必ず交付します。

解雇理由を確認する

次にすべきことは、その解雇はどのようの解雇なのかを確認することです。解雇は、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇のいずれかに分類されます。普通解雇はもっとも一般的な解雇で、仕事(労働債務)が労働契約どおりに履行されていない、例えば能力不足とか勤務態度に問題があるなどを理由とする契約解除です。懲戒解雇は就業規則の懲戒規程を根拠に、非違行為に対するペナルティーとしての契約解除です。整理解雇はいわゆるリストラです。経営不振などの会社側の理由によって、つまり労働者には非がなく、契約解除されるものです。そして、そのそれぞれについて、解雇が法的に認められるかどうかの有効要件が異なります。問題解決には法的な検討が必要になってきます。

会社が解雇を撤回しない場合

もし会社が違法な解雇を行っていて、しかもその解雇を撤回しない場合には、何らかの法的な解決措置を取らない限り、解雇が無効になるわけではなりません。少なくとも、解雇を撤回するよう求める必要があります。そうした行動を何も起こさなければ、平然とあなたは離職することになります。つまり、解雇の違法性を問題にする場合には、解雇について異議を唱える必要があるということです。

具体的な対応方法については、こちらからご相談ください(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。

【参考コラム】問題解決のための行動に一歩踏みだす前にお読みいただきたいコラム~解決行動を起こす前に考えるべきこと

Posted by kappa