叱責の問題

2023年10月17日

叱責はパワハラではない。が…

もちろん叱責が即パワハラとなるわけではありません。業務遂行上叱責は当然必要なものです。誰かがミスをしても、問題を起こしても、いつもニコニコと笑っているだけの上司では困るわけです。仕事には適度な緊張感が必要ですし、また従業員には職務専念義務があります。私語が過ぎれば当然に注意や叱責を受けることになります。

業務上の必要性があるか

このように業務上必要な叱責であっても、問題はその叱責が本当の業務上必要な範囲に収まっているか、という視点から、叱責そのものの問題を考えることができます。

典型的には、些細なミス、日常的に起こり得るミスについて、執拗に叱責を繰り返したり、職場のなかで、見せしめ的に長時間にわたって怒鳴り続けるなどはもちろん、言葉や表現は穏やかでも、陰湿にグチグチと嫌味をいつまでも言われるようなものも当然問題でしょう。

【参考コラム】ミスが理由であっても、執拗な叱責や暴言が許容される余地はない

特定の社員だけに対する叱責になっていないか

これは公平性の問題です。職場の仕事は業務上定められたものであるにもかかわらず、上長の個人的な感情で、手心を加えられてしまうことが多々あります。例えば、気に入ったスタッフには猫なで声で、気に入らないスタッフにはヒステリックに、といったものでしょう。

偏った対応の事実を指摘する

ミスに対する叱責は甘んじていけなければならないという気持ちの一方で、同じミスをしているのに、一方はお咎めなし、一方には、執拗な叱責説教に加えて始末書まで書かされる、といった状況はとても納得のできないものです。またこうしたケースは、さらに上の上長などに相談し、事実関係をきちんと理解してもらうことが難しいことが考えられます。如何に偏った対応がなされているか、説得力をもって説明できるよう、問題の焦点を絞ることも大切でしょう。ポイントは、自分だけに不利益を負わせているという具体的な事実関係の指摘ができることです。

誰に対しても執拗な叱責をする上司

では、誰に対しても公平に叱責をする上司には、問題がないのか、ということではもちろんありません。どこでも、誰に対してもヒステリーを起こすこと自体、重大な問題です。冒頭の内容とも重複しますが、業務上の必要性のない叱責は、仮に、誰に対しても公平に叱責していたとしても、当然問題であることに変わりありません。こうした上司の場合、叱責することに使命感を感じているなど、上司本人は、管理職としての職責を一所懸命に果たしているのですから、自分が間違ったことをしているなどということは微塵も考えていません。

執拗な叱責を繰り返すのは、その問題を認識できないから

ですので、このような上司に、例えば仮に、その上司の叱責があまりに度を越していたことを指摘して、あるいはあなたがその叱責によってとてもつらい気持ちになっていることをお告げになったとしても、そのような申し入れを受けた上司は、自分にケチをつけられたとしか受け止めることができません。あなたは、自分という上司に逆らう不届きな部下、とすら考えるのかもしれません。

問題とするのは「叱責の仕方」

ここで考えなければならないのは、叱責の問題を解決するということは、問題のある「叱責の仕方」を変えてもらうこと、であることを認識する必要があります。つまり、業務上の必要性を大きく超えて、不愉快な気持ちにさせるような叱責を止めてほしい、求めることが問題解決の基本的なアクションということになります。

問題解決をだれに求めるか

上司の不適切な叱責の改善を求めるのは、この上司に対して注意指導ができるこの上司の上司や、この問題の上司に対する人事権限がある部署や担当者、ということになります。よくご相談でお見受けするのは、同僚やその上司の部下である上司、例えば、課長の言動に問題がある場合に、その部下である自分の上司である主任に相談する、といったケースです。話を聞いてもらうことで、気持ちの整理をするという意味では、意味がないとまでは言えないものの、部下は上司に対する人事権限などあるはずがありませんし、そもそも部下の話に耳を傾けないような上司であれば、あなたが直接その上司に解決を求めることと変わりありません。こうした場合、その同僚や主任に、解決権限のある担当者につないでもらうことをお願いすることが、建設的です。

問題は隠蔽される、会社は解決してくれない!?

そんな風にお感じなるとお書きになるご相談メールも多いのですが、その時に気を付けなければいけいないのは、それは本社人事に解決を求めても全く対応してくれない、という経緯があったのか、あるいは、みんな見て見ぬふりをしているから、会社に相談しても無駄だ、解決しない、とその相談者が思ったのか、そのどちらなのか、という点です。残念ながら、大半のケースは、後者であると言っていいと思います。職場の状況から、おそらく解決しないだろう、誰も何も言わないし、みんな黙認している、上司も状況を知っている、なのに何も変わらない、だから会社には解決する意思がない、という相談者の方の「推測」なのです。

見て見ぬふりをする同僚は、冷たい…!?

積極的に見て見ぬふりをしているわけではありません。目の前で、あなたが上司から執拗な叱責を受けている様子を見て、心穏やかでいられるはずがありません。嫌な気分はだれでも同じです。もちろんその気持ちの程度は人それぞれですが、もしあなたが逆の立場だったら、とお考えになってみると、見えないものが見えてくると思います。こうした問題は、自分の身に降りかかって初めて切実なものとして感じられるものではないでしょうか。

結局、自分が解決行動を起こすしかない

同僚に相談しても解決しない、職場の様子は上司の知っているのに、何もしてくれない、だから解決しない、とお考えになるのはいささか早計ではないでしょうか。職場の上司や会社が人事が、1を聞いて10を知るような優秀な管理職で、しかも職場の問題について率先して取り組む使命感を持っていることを期待することは、ドラマの世界でも非現実的かもしれません。ましてや、10を聞いても1も理解しない、そもそも問題の解決にすら後ろ向きであれば、なおさらです。あなたが、解決して欲しい、というご意向ははっきりと意思表示するほかありません。ここで考えなければならないのは、それをどう表現し、どう伝えるか、どんな方法で解決を求めるか、という課題です。

問題を伝えるには工夫が必要

叱責そのものが問題ではないことから、叱責されたことを問題とする場合には、それが業務上の必要の範囲を超えたものであることや、その叱責の仕方、方法が問題であることを、明確に伝える必要があります。怒られたことに対する不満を言っているだけ、と相談相手に伝わらないよう、工夫が必要でしょう。

抽象的な表現は使わない

もう一つ、相談時に大切なことは、抽象的な表現を使わないことです。不当な発言は止めてほしい、とか、不要な叱責は止めてほしい、というだけで、いったい何のことを指摘しているのか具体的に明らかでないような要求に対しては、そうした叱責はしていない、と返答されれば、それ以上議論の余地はなくなります。

具体的な事実を、5W1Hで報告する

いつ、どのような時に、誰が、何といったのか、それがどのくらい繰り返されたのか、とにかく具体的に指摘をして、それによって私はひどく不愉快な気持ちになった、今後は、こうした叱責の仕方は止めてほしい、と求めることです。具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。

【参考コラム】問題解決のための行動に一歩踏みだす前にお読みいただきたいコラム~解決行動を起こす前に考えるべきこと

Posted by kappa