パワハラ防止対策の実効性を確保するには

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パワハラ防止対策を実施するのであれば、せっかくコストをかけるのですから、その効果と実効性を伴うものであるに越したことはありません。その負担に見 合った効果が得られなければ、本当にただ形式的に、「実施しました」ということができるだけにすぎません。パワハラの防止が声高に叫ばれていても、パワハ ラ防止対策の実態が伴わなければ、職場のパワハラは逆に増えることになります。実効性あるパワハラ対策とはどうあるべきか、考えます。

コンプライアンス相談窓口は駆け込み寺のはず…

ところが、コンプライアンス相談窓口は話を聞くだけで、何もできない、特に何らかの解決のための対策を講じることができるような機能を持たせていないこと があります。これでは相談をした従業員の期待に応えることはできないばかりか、もしこうした相談の内容が極めて緊急性の高いものであった場合、会社は事実 関係を相談されながら、何ら対策を打ち出さなかったという責任問題に発展する可能性があります。相談窓口に具体定な解決策を講じるような権限を与えること ができない、あるいは与えることが適当でない場合でも、問題の解決に具体的なアクションを起こすことができる部署への連絡義務を課しておくことは最低限必 要なことでしょう。コンプライアンス相談窓口は、不満のある従業員のガス抜きだけが目的であっては実効性あるパワハラ防止対策としては、あまりに不十分で しょう。

問題を事前に察知することの重要性

相談者から話を聞く範囲では、些細な問題であって取るに足りないと判断したとしても、もっと重大な問題がその話の内容の奥に隠されている可能性がありま す。相談者は勇気を振り絞って、慎重に言葉を選びながら問題の事実関係を説明しようとします。そのため肝心な問題の事実関係がはっきりと浮かび上がらない ことが往々にしてあります。本当は問題の核心は別のところにあるにもかかわらず、それを直接には話しにくい事情があったり、あるいは話をしている本人自身 が、問題の核心が見えていない場合もあります。そうした問題をどうくみ取るか、という大きな課題があります。

問題の兆しは必ずある

トラブルの解決支援をする中で私がいつも感じることは、トラブルの前兆は必ず何らかの形で表れている、ということです。しかし日常業務の中で、それに気がつかないか、あるいは黙認、放任することが常であるため、問題と問題としてとらえることができなくなっているために、それにきちんと対応するタイミングを 逸してしまっています。トラブルに遭遇した経営者の方は、たいてい、「確かにあの時は、そんなことがあった…」などと、振り返ってみれば確かにおかしいと 思えるようなことが、次々と思おい起こされてきます。思い出すことができることだけでもいくつか挙げることができるのですから、記憶に留められなかった前 兆はその何倍もあるはずです。そうした前兆に気づき、そして適切な対処ができていれば、深刻なトラブルは回避できます。これこそがトラブルの未然防止の中心的課題です。

問題の事前察知は、普段のコミュニケーションがものをいう

トラブルの未然防止のために必要なことは、まずトラブルの前兆をしっかりと感じ取ること、そしてその前兆に適切に対処すること、の二つです。その一つ目 の、問題を問題として確実に把握するためには、職場から十分な情報を汲み取らなくてはなりません。普段から職場の中でのコミュニケーションに気を配ってい れば、そうした情報に触れ居る機会も多いかもしれませんが、職場とは離れた場所に居るなど、従業員と接する機会が少なければそうした機会も少なくなりま す。だからといって安易にSNSなどを利用することは賢明ではないでしょう。SNSはコミュニケーションを補足するツールであって、それですべてが事足り るものではありません。

パワハラ防止研修でパワハラは未然に防ぐことができるか

詳しくは、こちらのページをご覧頂きたいのですが、大切なことは、そもそもパワハラの根本的な原因は何か、その当事者は誰か、を明確にしておくことが重要でしょう。パワハラは上司が部下に対してするものという考え方のみでは、そもそもその実態のよく分からないパワハラに対しては、部分的な効果にとどまるように思われます。詳しくはこちらのページをご覧ください。誤解を恐れずにあえてその原因を考えれば、

パワハラの原因は、職場環境と当事者の心の状態

であると私は考えます。その根底には、仕事上の不満や不安、ストレスなどが当然考えられる訳ですから、そうした不満や不安、ストレスをどう減らすか、適切な状況に保つか、については常に考えならない課題です。一方で、そうした不満や不安、ストレスを感じている状況で、必ずパワハラなどの問題が起こる訳ではありません。そのはけ口をパワハラという行為に向かわせる要素が整ったときに、パワハラが実際に起こることになります。また、そうした不満、不安、ストレスを感じながら業務に従事している中で、上司からの指示や注意などの言動に対して、いつも以上に神経質に受けとめてしまうような場合もあるでしょう。

では、ストレスなどをパワハラ行為に向かわせる要素は何か、それはパワハラを容認する職場環境と、パワハラ行為をしようとする本人の気持ち、この二つではないかと考えます。

もう一つの大きな問題は、当事者の心の状態とも関連するものですが、人間関係面の能力に著しく劣る特性を従業員が持っている場合には、いわゆるトラブルメーカーともなり、一方ではパワハラ常習上司ともなる可能性があります。こうしたケースは非常に深刻で、教育訓練によって多少の改善が図れるケースもあれば、これを一つの特性として受け止め、配置転換などで対応せざるを得ない状況があることを会社としては認識しておく必要があろうかと思います。

職場環境を変えるのはトップの本気度

パワハラとパワハラと認識できない加害者の気持ちの状態を変えることは容易ではありませんが、もしそれが、パワハラを容認するような職場環境が生み題しているものであれば、職場環境を変えればパワハラは未然に防ぐことができることになります。ベテランスタッフや上司らが職場の同僚らに対して、日常的に暴言を吐く、大声で叱責する、長時間の説教をする、などの状況を会社として放置していれば、それが職場風土となり、従業員に受け継がれていきます。

そこに、そうした免疫のない新規採用者が加われば、当然パワハラの問題は即座に頻発することになります。ところが、従来からの従業員は、パワハラは当たり前だと思っていますから、冷ややかな目で黙認するだけで、何の救いの手を差し伸べるわけでもありません。助けを求められても、「ここはこういう職場だから」とか、「あなたが我慢すべきだ」などというパワハラを助長するようなアドバイスしか出てきません。彼らは、決してパワハラを認めているわけではないのですが、この職場はこういう職場だとあきらめている、割り切っているのです。しかも自分のその犠牲者なのですが、それを受け入れることで折り合いをつけることが職場のルールとして暗黙の裡に認識しているのです。こうした状況をどうお考えになるでしょうか。

職場の中で、この環境を変えようとする動きは起きないでしょう。またそうした動きがあったとしても、周りにつぶされます。トップが率先してパワハラ撲滅を宣言しなければ、職場環境は変わらないのではないでしょうか。

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