この問題はパワハラに該当するのかがどうしても気になる方へ
パワハラかどうかの判断で解決行動を決める…!?
「この問題はパワハラにあたるのかどうか、判断ができない」
「パワハラに該当するなら、解決行動を起こしたい」
「パワハラにならないのであれば、仕方がありません…」
ご相談メールでしばしばいただくご意向、感想であり、ご質問です。つまり、あなたがお悩みの問題が、パワハラに該当するのであれば、解決行動を起こそうと思う。けれど、パワハラではないというのであれば、仕方がないので我慢をする、という内容です。そして、この問題がパワハラに該当するのかどうか、教えて欲しい、というご相談です。
こうしたご相談に対して、私がたいていご返信申し上げる内容は、
「パワハラであると判断できることで解決行動を起こすことができるのであれば、パワハラであるとお考えになっていただいて結構です」
というものです。そんないい加減な回答をするなど、けしからん、とお叱りを受けるでしょうか。ですが、この回答の背景には、次のような考え方があります。
パワハラかどうかの判断に意味が無い理由
パワハラについては、労働施策総合推進法30条の2、いわゆるパワハラ防止法で定義規定が設けられていますが、この規定文言の重要な点は、その定義されたパワハラをしてはいけません、というものではなく、パワハラで職場環境が害されることが無いようにしなさい、と事業主、つまり会社側に対してですが、に求めるものになっているということです。もっといえば、パワハラの相談があればきちんと対応すること、パワハラが起きないような未然防止に努めること、を事業主に求めるものである。ということです。
「それならやっぱりパワハラかどうか判断できなければ、相談しても意味が無いじゃないか」
と言われそうですが、この法律規定が会社側に求めているのは、パワハラがあったと相談があれば、きちんと対応しなさい、ということなので、あなたが相談する前にパワハラかどうかを判断する必要は全くないのです。実際に今このコラムをお読みいただいているということは、あなたご自身がパワハラではないかと思われる問題に直面しているのではないかと思いますが、そうであれば、「これはパワハラではないか」と相談することで、会社はきちんと相談に応じなければならない義務がある、ということになります。
パワハラがあった、と相談すること自体に意味がある
つまり、あなたがパワハラではないかとお感じになった段階で、所定の相談窓口でも、上司や人事などでも、誰でも結構かと思いますが、これはパワハラではないか、とご相談になることに全く躊躇する必要はない、ということになります。そうした意味から、私は、パワハラであるとして相談するよう回答しているのです。
問題解決ができる人に相談する
今、「誰でも結構かと思いますが」と書きましたが、あなたがパワハラであると考える問題の相手方当事者、あなたにとっては加害者ということになりそうですが、その加害者に対して、注意指導ができる立場にある担当者、部署に相談をしなければ意味がありません。
例えば、上司のパワハラを、同僚の先輩に相談しても、その先輩は上司の部下ですから、もしかしたら一緒になってパワハラをしないよう求めてくれるかもしれませんが、その先輩に上司の言動に制約を掛けることができるような権限は無いはずです。上司にそっぽを向かれればそれまでですから、いずれにしても、その加害者にいわばお灸をすえてもらえる立場の担当者、部署でなければ意味が無い、ということにはなるかと思います。
その相談先は、たいていの場合、所定の相談窓口が設けられているはずですので、その相談窓口に相談を持ち掛ける、ということになるかと思います。
具体的な事実関係の伝え方がカギ
さて、問題はその後です。あなたからパワハラがあると相談を受けた担当者は、その担当者にどこまでの問題解決に関わる権限が与えられているのかにもよりますが、まず事実関係の具体的な聞き取り確認があるはずです。いつ、どこで、どのような状況で、その加害者が、あなたに対して、何と言ったのか、何をしたのか、といった具体的な事実関係です。このときに、なんとなく威圧感がある、とか、話しかけづらい、という指摘をしたとすれば、
「具体的に、どのような言動に対して威圧感があると感じるのか」
「話しかけづらいというのは、何かを質問したときに無視をされた、とか、逆に怒鳴られた、質問を不適切だと叱責された、といったことがあったのでしょうか」
などの、具体的な事実関係は何かという質問が返ってくるかと思います。あるいは、よくあるのは、暴言を吐かれた、誹謗中傷された、などですが、こうした抽象的な指摘は、率直に申し上げて、聞き取り確認をする担当者の視点からは、あまり印象のいいものではありません。なぜ具体的な事実を指摘しないのか、本当は具体的な事実など無いのではないか、などと斜に構えた見方をされてしまう恐れすらあります。
抽象的な形容詞はいらない、具体的な事実のみを指摘する
問題の解決を図る場合には、まず具体的な事実関係を詳細に整理して記録されておくことは、必須ではないでしょうか。そこでは、抽象的な形容詞は一切排除することがとても重要ではないかと思います。
こうした聞き取りによって具体的に明らかになった事実関係について、今度は相手方当事者、あなたにとっては加害者からの聞き取り確認をすることになります。ここで確認された事実に基づいで、会社は再発防止に向けた対応策を検討することになります。ここまでが、実はパワハラ防止法が会社に求めるものになります。ですので、今あなたが直面する問題が、パワハラかどうかお悩みになり、しかもその判断ができないために解決行動、相談窓口への相談を躊躇されているとすれば、そのようなお悩みは全く必要がないものであることがご理解いただけたのではないかと思います。ぜひ解決に向けた第一歩を踏み出して頂きたいと思います。
今の段階は、問題解決の第一歩に過ぎない、と考えるべき
ですが、これは解決に向けた第一歩です。これも私が常々申し上げることですが、問題解決は根気の勝負です。相談窓口に相談したらきれいに解決する、などと言うことは極めてまれであって、これから様々なやり取りが繰り返される中で、解決の方向性がようやく見えてくる、とお考えいただくことが大切ではないでしょうか。
さて、あなた方パワハラがあるとして相談を受けた会社は、事実関係の確認作業をしたうえで、何らかの判断をするわけですが、ここで直面する問題は、おそらく次ようなものではないでしょうか。
【参考コラム】「それはパワハラには該当しないと判断しました」…って、どういうこと!?
一方で、あなたのお考えになるパワハラかどうかの問題は、そういう問題ではなく、解決行動を起こすとか、そういうことを考える前に、客観的にパワハラかどうかが知りたいんだけれど…というお気持ちであれば、あらためて、そもそもパワハラかどうかの判断に意味はない、ということについて、次のコラムをご覧いただければと思います。
【参照コラム】パワハラかどうかの判断に意味はない!?
具体的なご相談は、パワハラ相談窓口のページからご相談メールをお送りください。