解決行動を起こす前に考えるべきこと

opinion&topics,解決行動のヒント

様々なご相談をお受けして感じるのは、皆さんが悲壮な気持ちをもって現状の打開のための方策を模索されている点は、ほぼ共通するところかと思います。今回お考えいただきたいことは、それからの行動についてです。

解決行動二つの選択肢

解決行動に一歩踏み出すには、これもどなたにも当てはまることかと思いますが、特に気持ちの面で大きなハードルがあります。行動を起こすべきか、それでも当分の間は静観するか、悩ましいところです。

状況を静観するという選択肢の意味

静観ということは、事実上問題の状況を放置黙認をするということで、もっと言えば何もせずに問題のある状況を耐え続ける、ということです。これは、時間の経過によって状況が改善するあるいは問題の状況が解消する見込みがある、あるいはそれを期待する、というものです。ですから、ここで考えなければならないことは、問題の状況に耐え続ける物理的経済的負担の大きさと、問題解消の見込みの現実的な程度、です。

静観が解決行動になるケース

例えばパワハラ加害者の上司が数カ月後に異動することが確定しているとすれば、数カ月後にこの上司からのパワハラからは解放されると考えられますから、その間のストレスからどう自分の身を守るか、パワハラ被害から免れるか、その方法を考えながら数カ月間を過ごすことが解決対応になるのかもしれません。

静観という選択肢のリスク

ところが、異動をした上司と同じ部署に自分も異動になった、とか、上司の異動先が自分の業務と密接な関連のある部署だった、あるいは、その上司がさらに上の管理職に昇格した、といった場合には、異動によって、問題の解決には至らないでしょう。何のために必死で耐えてきたのか、落胆は激しくなるばかりです。

静観は問題の解決ではない

これは、状況の静観という選択肢自体が、問題の根本的な問題の解決に全くコミットしていないことに原因があります。つまりこの例でいえば、問題のパワハラ上司の言動については、何も変化がない、のです。

静観という選択肢が誤りとも言えない

だからと言って問題の状況を静観するという選択肢が誤りである、とお考えになることも早計でしょう。問題の静観、つまり何もしないという解決行動、と言っても全く行動をしないのですから、行動をすることに伴う負担はゼロなのですから、これほど楽な解決行動はありません。これで問題の状況から解放されれば、それに越したことは無いからです。すべては結果です。

静観の大きなリスクはメンタル面への影響

ですが一方で、現状を甘んじて受け入れなければならない、その負担に耐え続けなければならない、という大きなリスクを伴います。その負担があまりに大きいものであった場合には、あなた自身の心身に支障をきたすことも考えられます。それでは本末転倒でしょう。

解決行動は必要、という回答

やはり何らかの行動を起こさなければ、とお考えになることが健全と言えるかと思いますし、問題の状況を黙認するという姿勢自体が、これは労使双方の視点からでも肯定できないという意味では、教科書的にも、解決行動は起こすべき、という回答にならざる得ないでしょう。

解決行動の目的を明確にする

ここで問題になるのは、では、どのような解決行動を起こすべきなのか、です。ここで申し上げなければならないことは、手段と目的を混同するな、ということです。つまり、解決行動は、問題の解決のための手段であって、問題の解決という目的に結びつくものでなければならない、ということです。

何が問題の解決なのか?

上司のパワハラが問題であるならば、その問題の解決は、パワハラの言動が無くなること、パワハラの言動による被害が無いようにすること、であるはずです。パワハラの言動を止めさせるための行動、被害から身を守る行動、をお取りになることが、解決行動になります。

パワハラ上司にペナルティーを与えたい

ところが、特に長期に渡って上司からのひどいパワハラに耐えてきたとすれば、問題の解決は、あなたの損なわれた気持ちの回復を第一にお考えになるかもしれません。それが無ければこれから先の行動ができない、というお気持ちなのでしょう。ここであなたが求めることは、パワハラ上司からの謝罪であり、会社によるパワハラの確認とその上司に対する処分、になるでしょうか。

あなたができることの限界

ですがこのパワハラ上司からの謝罪にしても、パワハラ上司に対する会社による処分にしても、これはあなた自身がお出来になるものは、上司自身が、そして会社がそのような任意の判断をすることを促すにとどまります。つまりそのパワハラ上司や、会社の誠意ある対応を期待するしかない、ということになります。

合意点が見いだせないとき

ところがそうしたあなたの期待がすべて叶わなかったとき、会社外部の解決制度の活用を考えなければならなくなります。

会社との対立は避けるべき

もしあなたが雇用の継続をお考えであれば、会社との対立は極力避けるべきでしょう。これからもこの会社でお仕事を続けていくことを考えれば、会社からあなたの心証を悪くするような行動をとるべきではないからです。ここで誤解が無いように付け加えれば、こうした姿勢は、会社の対応に迎合しなければならない、ということではないということです。

建設的な話し合いで会社との利害を一致させる

冷静に、話し合いによって何らかの着地点にたどり着く努力は継続させるべきで、建設的な話し合いが対立関係を生むものではないからです。解決行動は常に会社との対立を生み出す、というイメージは、いたずらに解決行動を忌避するものになってしまうでしょう。問題の解決は、労使双方にとって利益があるものです。問題の放置は会社にとっても決して望ましいものではないからです。

それでも問題の解決に至らないときは…

会社との間で、冷静かつ建設的な話し合いに努めていたあなたでしたが、会社の姿勢は頑なで、折り合いをつける着地点にとても到達できそうもないと感じたとき、次の行動をどう考えるか、という問題です。

雇用を継続する意味

この時あなたがお考えになるべきことは、雇用の継続という意向の強さです。雇用の継続に固執しない場合、あなたの解決行動の選択肢は大きく広がることになりますが、それだけお考えになるべき要素も多くなることに気が付かなければならないと思います。つまり雇用関係を終わらせるということは、雇用の帰属によって得られる生活の糧を失うこと意味します。万が一雇用関係を終わらせなければならなくなった場合、その解決行動は果たしてペイするのか、という現実的かつ切実な問題を考えない訳にはいきません。もちろんお金の問題だけではないかもしれませんし、これは最終的にはあなたご自身のお気持ちの満足の問題ではあります。

事態の展開を具体的に想定し、自信ある行動を起こす

極端な展開をここ前イメージしてしまいましたが、ここまでに至る経緯には、様々な状況や紆余曲折があり、長時間が経過しているかも知れません。ですが、事態の展開は常にドラスティックです。何が起こるか分かりません。そうした意味では、一つ言えることがあるとすれば、全ての解決行動は、雇用の継続を前提に、建設的な話し合いの継続に努める、ということに尽きるのではないかと思います。雇用の継続という選択肢を放棄することはいつでもできますが、一旦これを選択した場合、もう後戻りはできないからです。

対応方法はまさにケースバイケースですので、具体的なケースについては、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。あなたの状況への対応方法などについて、簡単にコメントして返信します。