パワハラで処分者を出したい!?

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身に覚えのないパワハラを疑われ、事実関係の確認作業もなく処分を仄めかされたり、始末書の提出を求められている、といった問題の本質は、たいていの場合、退職勧奨を意図したえん罪の演出であるといっていいと思います。ですので、このような場合の、不幸にして「被疑者」とされてしまったあなたの対応方法は、私はパワハラをしていない、という主張をするのではなく、根拠のないパワハラ加害者扱いは止めろ、になります。

もっとも、根拠のないパワハラ加害者扱いまでして自分を辞めさせようとする使用者に対して、あきらめ、落胆から、離職を考えるかもしれませんが、その場合、あなたはパワハラをして辞めた、というレッテルを張られる可能性もあります。ですが、見ている人は見ているものではないでしょうか。あなたはパワハラ加害者に仕立て上げられ、辞めていった、そして、この会社は、気に入らない社員は、パワハラ加害者にして追い出すのだ、次は自分かもしれない、などと考える社員の方が、多数派ではないかとすら思えます。

そうした考えは当たらずとも遠からず、ではないでしょうか。それは、あなたをパワハラ加害者にすることで、使用者の思惑通りにあなたを離職させた場合、使用者は「うまくいった」と考えるからです。そして、また同じことを繰り返します。そこに罪の意識などは全くありません。

念のため申し上げておきますが、大半の経営者、使用者の方は、適切な対応をしていると思いますし、事実そうではないでしょうか。ほんの一部の使用者に、パワハラ加害者扱いをすれば簡単に気に入らない社員を離職させられる、などと言う甘言に踊らされるものがいる、ということです。あなたは、たまたま運が悪く、このような使用者に遭遇してしまった、とお考えになることが妥当ではないでしょうか。

もちろん、運が悪かったと思うことで問題が解決するわけではありませんので、さてここからどうするか、具体的な対応を考えなければなりませんが、これが解決行動、ということになります。

前置きな長くなりすぎましたが、ここで本題に戻ります。

身に覚えのないパワハラを執拗に疑われた場合、たいていのケースは退職勧奨を意図したえん罪と書きましたが、実はそうではないケースも散見しているところです。パワハラ規制法が施行され、この4月からは中小企業に対する適用も始まっていますが、このパワハラ規制法の施行に対して、過剰に反応する使用者が、恣意的なパワハラ加害者を作り出すケースが本題のテーマです。

実はパワハラ規制法施行以前からも、そのような問題が散見されていました。初めてこの問題に遭遇したのは、おそらくは10年ほど前だったかと思いますが、一体使用者は何を考えているのか、全く理解できなかったのです。ですが、解決行動のプロセスで見えてくる使用者の言動から、どうもそうかもしれない、という気配を感じることができました。

どういうことか、といいますと、使用者、ここでは人事権限のある経営者を含めた担当者、人事部門の責任者、などが想定されるわけですが、パワハラ撲滅を推進する会社の中で、その実績を上げようとする上記の担当者らが、パワハラを理由とする処分者を出すという目に見える成果を上げたい、会社はパワハラに対して、こんなに厳しい態度で臨んでいる、というアピールをしたい、という動機から、パワハラ申告があれば当然飛びつくでしょうし、表に現れた些細な問題や、パワハラの範疇に入るのか疑問な問題についても、パワハラとして処分をしようとする、という傾向がみられることです。

この問題の特徴は、冒頭で触れました、退職勧奨を意図したパワハラのえん罪の場合と異なり、問題となる事実が明確になっている、という点です。問題は、その問題とされた事実が、パワハラの範疇に含めるには無理があったり、あるいはそれを理由に懲戒処分を検討するとしても、とても処分には該当しないような事実が、懲戒処分とされるという点に特徴があります。

退職勧奨を意図したパワハラの冤罪は、その対象となった労働者を排除する、辞めさせることが目的であるため、懲戒処分などは実際には行われず、懲戒解雇を仄めかして自発的な退職に誘導する、場合によっては金銭交渉まで用意している場合もありますから、実態はまさに悪質なリストラです。

一方で、パワハラ撲滅優等生アピールのケースでは、処分をすること自体が目的であるため、確実に処分に結びつけます。しかもコンプライアンス重視の視点から、処分に至る「手続き」は周到に行う、エビデンスを集める、ということに余念がありません。問題は、本人たちが正義感から、使命として実行していて、処分すること自体が目的である、という点が問題解決を難しくしています。

では、このパワハラ撲滅優等生アピールの犠牲になった場合、解決行動をとることは難しいのか、と言えば、この問題が特別に難しいというわけではないと思います。普通に考えれば、処分をするとしても懲戒処分に該当しない注意処分程度が妥当と思われるような事案で、就業規則の懲戒規程が許容する最も重い処分にするとか、当初告げられた問題では重い処分が難しいとみるや、過去にさかのぼって重箱の隅をつつき、軽微な非違行為を積み上げて重い処分にするとか、あるいは優等生アピールのため、不用意に事実関係の公表などをしたりするなど、少なからず無理な対応をするわけです。その無理をごり押しした対応自体を問題にする、そして、まさに処分ありきの対応だ、と非難することが考えられます。

一般論として、パワハラという問題が提起された場合、ことの是非はともかく、使用者はできるだけパワハラとして取り扱いたくないはずなのですが、逆に、これを積極的にパワハラとして扱う姿勢が見える場合には、やはり何らかの問題がある、と感じ取れる心の状態を保っておくことが、自分自身のを守るという意味でも大切かと思います。

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