人事の対応があまりにそっけない理由とは?
問題解決をあきらめる前に…
例えば、上司からの執拗な叱責や、感情的に怒りをぶつけられることが頻繁にあり、同僚の先輩などの助けを借りてやんわりとその上司に対応の改善を求めても、全く意に介さない上司の姿勢に業を煮やしたあなたが、意を決して本社人事や相談窓口に、上司の言動の改善を求めたときに、あなたに対応した本社の担当者の応対があまりに形式的な対応で、しかもその原因があなたにあるかのような返答をされたとしたら、あなたはもうこれ以上人事に解決を求めても無駄、とお考えになるかもしれません。
【参考コラム】叱責の問題
たった一回の申し入れですんなり解決するとは思わないほうがいい
ですが、これがもし人事等への1回目の解決要請であるとすれば、あなたの相談を受け付けた担当者が、たまたまあなたの申し入れの内容、趣旨、あなたの意向を正確に受け止めなかった可能性があります。人事スタッフであればだれでも問題解決に積極的であり、かつ、そうした問題に対する感受性が高く、常に適切な対応ができる、ということは理想だからです。ですので、不幸にしてそのような担当者が対応してしまった場合には、外れくじを引いたと諦め、2回目の解決要請にために、満を持して申し入れの仕方やその方法についても、注意深く準備をする必要があります。
解決をするべき問題として認識してもらうために
その準備とは、このような感受性に乏しい担当者であったとしても、対応せざるを得ないような、いわばプレゼンをあらかじめ用意をしておく、ということです。例えば上記のようなケースであれば、あなたは上司から日常的に執拗な叱責を受けていて、精神的に疲弊をしていること、直接改善を申し入れたが、逆に状況が悪化したこと、だから、何とかして欲しい、という申し入れをまずはしてみる、ということになるかと思います。
申し入れる相手は、状況を何も知らない
このとき大切なことは、申し入れる相手は、あなたの職場の状況を全く知らない、ということです。全く職場の状況を知らない相手に、噛んで含めるような説明をする必要があるので、あなたご自身としては職場の日常として当然のことと受け止めていることでも、改めて説明が必要になります。
十を聞いて一すら頭に入らない相手を想定する
そして、対応する相手は、こうした問題に対して、感受性が乏しく、積極的に対応してくれることが期待できないことを想定して、まずはこの相手に、これは問題である、何らかの対応が必要だ、と感じてもらうことができるような働きかけをする必要があります。十を聞いても一すら頭に入らないかもしれない相手を想定るする、ということです。
問題の要点だけを伝える
そのためには、まず申し入れ内容を分かりやすくすることが必須です。最初に投げかける内容は、多少抽象的ではあっても、相手が、この場合であれば申し入れをする相手である人事等の担当者ですが、シンプルに問題を把握できるようなものが望ましいのでないでしょうか。ですので、まずは、上記の繰り返しになりますが、「あなたは上司から日常的に執拗な叱責を受けていて、精神的に疲弊をしていること、直接改善を申し入れたが、逆に状況が悪化したこと、だから、何とかして欲しい」という申し入れのみをして、相手の反応を見極めることです。
これに対して、何の反応も示さないようであれば、別の担当者に働きかけた方がいいでしょう。常識的な対応をする担当者であれば、ここでまず具体的な内容の確認をすることになるからです。
事実関係の聞き取り確認は第一ステップ
具体的な問題の言動の事実関係についても聞き取りをしてもらった後は、では次に問題の上司からもこの事実の確認をします、という流れになるでしょう。もしこの時に、問題の上司からさらなる嫌がらせの可能性が考えられる場合には、その旨を伝えたうえで、何らかの対応をお求めになっておくことが大切かと思います。またその懸念が現実になった時には、解決行動をに対する報復的な嫌がらせを受けていることを、適宜お伝えになるべきでしょう。もちろん具体的な嫌がらせの内容について、説明ができるようにしておくことは必須です。
会社の対応を静観する
問題の上司からの事実確認も終了し、人事から何らかの解決措置が講じられれば、とりあえずはその後の状況を静観するということになるかと思います。このときに講じた人事の再発防止措置が、あなたにとって納得のできないものであったとしても、あなたが逆に何らかの新たな負担や不利益を被るものではない限り、問題の言動の再発に対して多少なりとも牽制となることが考えられるものであるとすれば、まずは静観されるべきかと思います。
その状況でとりあえず問題の言動が収まっている、あるいはあなたがその被害にあわずに済んでいるとすれば、人事としては適切な対応をした、と少なくとも法的には解釈されるからです。ですが、また問題の言動が再発したり、あなたがまた何らかの被害を被ることがあるとすれば、改めて問題の解決をお求めになる必要があります。
その後の音沙汰がない場合に考えるべきこと
ところが、問題の上司からの事実関係の確認作業があったのかどうかも分からず、しかも上司の言動については何ら変化もなく放置されている状況が続くようであれば、人事に対して、問題への対応の進捗を確認する必要があるでしょう。おそらくは、進捗状況についての説明があり、何らかの対応を検討していること程度の回答があるのではないかと思いますが、一方で、あなたの問いかけに対して、歯切れの悪い回答であったり、あまりに形式的すぎる内容の無い回答である場合には、人事は別のことを考えている可能性があります。
人事があなたを警戒している!?
それは例えばですが、人事はあなたの申し入れに対して、かなり警戒心を抱いている可能性です。あなたはきっと何らかの法的解決を図るのではないかと推測し、いわばあなたを会社の敵としてみなしているという可能性です。あなたにとってはこのような人事の姿勢は不本意とかしか言いようがありませんが、人事がそのような判断をしているとすれば、あなたが離職を前提に法的解決をお求めになることをお考えであれば別ですが、この状況に対して、人事をさらに攻め立てることは、人事がさらに強固な鎧で身を固める効果しかないかもしれません。
人事の真意を探る
ですのでこのような状況を見て取ったあなたがとるべき対応は、問題の上司の言動を改善するよう、早急に実効性のある措置をとれ、とお求めになるのではなく、問題の事実関係は明らかなのに、なぜ解決対応を取ろうとしないのか、という真意を尋ねる問いかけになるのではないでしょうか。
人事は問題の言動を認識したうえで、あえて対応しない、放置黙認を決め込んでいるとすれば、あなたとしては、人事はあえて意図的に黙認していることをあなたが理解していることを示した上で、なぜ黙認するのか、と問いかけ、そして、あなたとしては法的解決図るような意思はなく、雇用の継続と当たり前の職場環境で当たり前の仕事ができるをことを望んでいるだけだ、という気持ちを示してみます。
表向きは無反応であったとしても、人事としての気持ちは大きく動揺しているはずです。ここで少し考える時間を人事に上げてください。
人事には人事の社内的な事情がある!?
戦闘態勢に入って強固な鎧に身を固めた人事が、その鎧を脱ぐのには相当な時間がかかると思うからです。どちらが正しいのかという判断は容易についたとしても、一気に反対方向にかじを切るには、それ相応の根回しも必要でしょう。あるいはメンツのために、鎧を脱ぐことができずに、煩悶しているかもしれません。勝負の軍配はあなたに上がっているからです。
戦略的な妥協を提示してみる
ですが、あなたの期待に反して、人事が頑なな姿勢を全く崩さないとしたら、ここでもう一度、人事に逃げ道を作ってあげてはどうかと思います。これは人事に翻意を促すことが目的というよりは、次の段階としての法的解決を図る際に、あなたにとって有利な交渉材料を積み上げることを意識するものになるかと思います。
人事の対応があまりにそっけない理由とは?
表題の理由とは何か、ですが、おそらくは正面からあなたに対応する余裕が人事に無いこと、になるかと思います。この余裕とは、忙しくて時間がない、という物理的なものではなく、あなたに対する恐れから、不用意な対応ができない、強固な鎧を着たままで、あなたに隙を見せることになるのではないかという不安にさいなまれている状況、と解釈することが妥当ではないでしょうか。
ですが、あくまでも一つの考え方ですので、具体的な対応については、ケースバイケースでお考えいただく必要があることは当然です。考え方のヒントとしてお考えいただければと思います。具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。