パワハラの加害者にされた

2023年11月10日

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まずお考えになるべきこと

もしあなたに、パワハラの加害者であると指摘されるような事実が無いのであれば、全く心配する必要はありません。しかし一方で、こうした指摘に対して、何ら反論せず、または黙認していることも懸命ではありません。

事実関係が不明な処分はあり得ない

会社側から、パワハラに関しての聞き取りなどがあった場合には、パワハラであるとされた事実を具体的に特定させることが重要です。ですが、もし会社側から、具体的な事実の特定がなされなかったり、あるいはそれができない旨の返答があるときには、あなたが加害者として何らかの処分をするようなことは、会社はできません。もし何らかの処分がなされてしまったような場合には、会社がそれを撤回しない場合には、法的な解決を図るほかないでしょう。

【参考コラム】身に覚えなくパワハラ加害者とされた時に考えること

とは言うものの、パワハラであると指摘されるような事実が全くなかったか、と問われ、自信を持って、「無い」と言える方は、むしろ少数派かもしれません。自分ではパワハラの認識は全くなかっとしても、果たしてパワハラと言われるような言動がなかったか、不安になるのでは無いでしょうか。そうしたあなたの気持ちに付け入るかのように、聞き取り確認の担当者は、あなたに対して、「パワハラをした覚えはあるか」と聞くかもしれません。

「あなたはパワハラをしたか?」という質問には答える必要なし

パワハラの事実を具体的に特定せずに、いきなり「パワハラをしたか」「これはパワハラかと思うか」「問題だと思わないのか」などと、あなたがあたかもパワハラ加害者であるような、パワハラ加害者であることを無理に認めさせようとするような問いかけには、正面から答える必要はありません。パワハラの申告があった場合、まずはその具体的な事実確認があるものであり、そうしたプロセスもなく、いきなりこのような問いかけがあることは、通常考えられません。というよりも、問いかけそのものに問題があるからです。わな、と言ってもいいかもしれません。

「パワハラをしたか?」という問いは自白への誘導

これは事実関係の確認ではなく、上記とも重複しますが、パワハラをしたという言質を取るための誘導であり、あるいは強要であって、とても適切な対応をしているとは思えません。むしろこのような問いかけが唐突にあった場合には、あなたを恣意的にパワハラ加害者に仕立て上げたい詰問者の意図がある、とお考えになることが妥当ではないでしょうか。

自白に応じないあなたに対する感情的な非難は、自白の強要そのもの

こうした場合に、パワハラをしていない、あるいは、具体的な事実の指摘をするよう求めると、詰問者は、「そんな認識だからダメなんだ」「全く自覚がないのか」「反省の態度が全く見られない」などと、具体的な事実には徹底して触れずに、あなたを非難攻撃したりするでしょう。この段階で、あなたは、これはパワハラの問題ではまったく無いこと、この詰問者が、あなたに対して、何らかの不利益を与えることを意図した極めて悪質な言動をしている、ということに、明確に気が付く必要があります。つまり、あなたに対して恣意的に精神的な苦痛を負わせ、合理的な理由が見いだせない会社の人事判断を、あなたに強要しようとしている、ということです。それはあなたの意に沿わない配転かも知れませんし、自発的な離職を促すものかもしれません。

【参考コラム】リストラの手段として蔓延するパワハラ加害者の冤罪

パワハラを理由に何らかの処分を告げられた場合

客観的な事実について、それをパワハラであるとして会社から何らかの処分が告げられた場合には、まず、その事実が果たしてパワハラに該当するのか、という問題と、パワハラが懲戒処分に該当する事由として就業規則などの規定されているのか、そしてそもそも会社としてのパワハラの定義の問題など、確認すべき要素は多岐にわたります。

【参考コラム】懲戒処分を告げられた

仮に何らかの懲戒処分が妥当であると判断されるとしても、その処分内容が相当かどうかという問題もあります。非常に微妙な判断が求められる点もあるため、処分に納得ができないのであれば、問題提起をすることもやぶさかではないと思います。

パワハラに対する処分を成果として評価する異常な会社の場合

また、以下のコラムのような、パワハラに対して厳しい姿勢で臨んでいることをアピールするために、かなり微妙なケースや、えん罪に近いものでも、会社主導でパワハラ加害者の処分を強引に行うようなケース、特に規模の大きい会社で散見されますので、ご参考までにご覧いただければと思います。

【参考コラム】パワハラで処分者を出したい!?

パワハラ申告があっただけで懲戒処分はあり得ない

「あなたに対するパワハラ申告がありました」と告げられただけで、事実関係の確認作業も一切なく、あなたが懲戒処分とされることはありません。ここで会社があなたに対する懲戒処分をしたとしたら、法的にはその懲戒処分は無効です。あなたがそのような状況に直面している場合には、毅然と処分は無効であること、直ちに処分を撤回することを強く会社側に申し入れることが必要です。

権限のない上司や先輩同僚からの懲戒処分(?)は無視していい

ただ、このときに一つ考えなければならないことは、この処分をあなたに告げたのが誰なのか、ということです。もしそれが直属の上司であったり、事業所の責任者レベルである場合には、その上司らが懲戒処分権限など無いにもかかわらず、ただあなたを脅すことが目的で懲戒処分だ、などと言っているだけの可能性があります。

事実関係を明らかにしようとしないのは、不当な意図があるから

まず、事実関係の確認です。いつ、どこで、誰に対して、どのような言動があった、という事実は真実なのか、ということです。そもそもこれが明らかにならなければ処分などありえません。それは被害者の希望で詳しくは言えない、とか、プライバシーの問題がある、などと言われるかもしれませんが、これでは事実の確認以前です。むしろ会社はあなたに対する処分ありきで手続きをすすめたいだけなのかもしれません。もしここで、抽象的な指摘に対してパワハラがあったことを認める言質を取られれば、まさに会社の思うつぼです。

上司と親しい部下が口裏を合わせている!?

やっかいなことに、あなたに対するパワハラ申告の本人が、あなたの上司と親しい関係にある場合、そしてその上司とあなたの人間関係が微妙であったり、あるいは嫌悪感を抱かれているのでは、と感じている場合には、これは上司と部下が計画的にあなたをパワハラ加害者として仕立て上げるシナリオがあった可能性があります。ですが、その上司と部下が示し合わせているかどうかはあくまでも推測であり、それ自体を問題とすることはあまり賢明ではないでしょう。

【参考コラム】うわさ

パワハラ扱いに無理があることを知りながら、上司が同調した事実が重要

ですが、このような場合には、おそらくはその部下と示し合わせた上司によって事実確認作業が行われるでしょう。そして、そこで指摘された内容は確かに事実であるとあなたが認める内容ではないでしょうか。ですが、その内容は、無理にパワハラであると指摘するものであるため、例えば私語の中で発せられたものであるとか、業務指示の声掛けであるなど、常識的な考えてパワハラなどと判断されるような内容ではありません。そうしたあなたの全うな反論や説明には、一切耳を傾けないで、一方的な処分や決定を押し付ける、という特徴があります。つまり処分判断に至るプロセスに問題があるということです。

あなたはどう対応するべきか

通常パワハラがあったなどの申告や相談があった場合には、会社はまず当事者双方から事実関係の確認をします。もし申告者からの聞き取りのみで会社が事実を認定しているのであれば、加害者とされたあなたかの聞き取りを強く求めることです。特に申告者が事実と異なる報告をしている場合には、それが事実ではないことを、具体的に説明する必要があります。

抽象的なパワハラ申告に対しては、具体的な事実を指摘して反論する

例えば、「些細なミスについて職場の同僚がいる中で執拗に叱責し、しかも関係のない親までも侮辱された」、といった申告者からの話については、「業務の適切な範囲での叱責で問題はないし、まして親など侮辱した覚えはない」といった抽象的な反論では説得力がありません。

抽象的な表現は一切使わず、具体的な事実のみを告げること

そのミスがどのようなミスで、決して些細なものとは言えないこと、申告者のミスは今回が初めてではなく、再三の注意にもかかわらず繰り返し同じミスをするため、職場の他の同僚の負担になっているが、申告者本人は全く意に介さないため、あえて職場の同僚がいる中でミスを指摘し、叱責しなければ他の同僚らに示しがつかないため、あえてしたこと、とか、親の侮辱については、「親の顔が見てみたい」と発言してしまったことは事実で、これは余計な一言だったと反省している、しかしそれ以上の発言はしていない…

といった具体的な弁明があれば、会社も心を動かされるのではないでしょうか。安易な妥協は、あなたの立場を悪くするだけでなく、モラルハザードの原因にもなります。つまり次にも同じようなことが起こりやすくなる、ということです。

事実は事実だが、パワハラと言われることに納得できない場合

会社が認めた事実は確かに事実だが、それをパワハラとされることに納得ができない、特にパワハラであるとして何らかの処分をされるとすれば、なおさらでしょう。ここでは、パワハラ認定の問題と、それを前提とする処分の問題に分けて考える必要があります。

パワハラかどうかの判断に関する議論は意味が無い

パワハラかどうかの判断は、そもそもパワハラの法律上の定義に抵触するかどうかの判断に事実上法的効果が無い以上、パワハラかどうかという議論をすることに意味はありません。もし意味があるとすれば、会社にパワハラ防止規程があり、その中で何がパワハラに該当するのか、具体的な行為が掲げられていて、それに該当するのかどうか、という問題になります。

【参考コラム】「パワハラ」かどうかの判断の問題

会社にそうした規定もなく、パワハラであると判断された場合には、その根拠を会社に説明させる必要があるでしょう。こうした場合に会社が参照すれであろう厚労省の公表しているパワハラの定義について、事前に確認しておくといいと思います。

パワハラかどうかを判断するのは会社

指摘された事実がパワハラに該当すると認められた場合には、次に問題となるのはそのパワハラに対する処分でしょう。これは懲戒処分の問題になります。ちなみにその事実をパワハラかどうかを判断するのは会社です。もし会社が懲戒処分を考えている場合には、間違いなくパワハラであると判断することになります。その判断に疑義がある場合には、もちろん反論をしておくべきでしょう。ですが、その判断を覆さなかったとしてもまったく落胆する必要はありません。パワハラかどうかの判断には意味が無いのです。抗議をする、反論をすること自体に意味があるのです。

問題は、本当に懲戒処分をされるのかどうか

会社のパワハラ防止規程の中で規定しているパワハラ事由のいずれかに該当したからと言って、いかなる懲戒処分も甘んじて受けなければならない訳ではありません。もし、思わず手が出てしまったという暴力や業務とは関係のないプライベートに関すること、個人的なことを中傷した場合には、重い処分もあるでしょう。その場合には、まずあなたが誠意をもって反省の意を示すことが何よりも重要かと思います。

懲戒解雇はあり得ない

しかし、思わず声を荒げてしまった、という事実のみでは、どんなに重くても譴責程度かと思われます。もちろん具体的な事実関係によって、まさにケースバイケースですが、間違っても懲戒解雇などはあり得ないでしょう。

申告者が本当にいた場合、申告者との関係は切り離して考える

申告者によからぬ意図が無い限り、パワハラ行為については、処分云々を別にしても、誠意ある対応で信頼関係の修復に努めることが、事態の早期解決につながるという点は、前提として念頭に置いておく必要があると思います。ですが、そもそも本当に申告者はいたのか、あなたに明らかにされない限り、これは全くの闇の中です。

パワハラ加害者というレッテルを張ることだけが目的か?

パワハラがあったとして、会社側の公式な対応がある場合にはまだ問題にどう対応すべきか考えることもできますが、お前はパワハラをした、パワハラ加害者だ、と言われるだけで、感情的な非難以外には、何ら人事的な処分がない場合、これはパワハラとして処分ができないが感情的に許せないという気持ちの表れなのか、あるいは、もっと意図的に、あなたをパワハラ加害者であることをことさらに公言をして、あなたを不利益な立場に追い込もうとしている、自発的に離職するような気持にさせようとしている、そのいずれかとも感じますが、どうでしょうか。

感情的なパワハラ加害者扱いを、嫌がらせとして問題にする

実はこのケースはかなり広範にみられるもので、パワハラの事実関係の確認の煩雑さやその結果としての処分に踏み切るリスクを勘案した場合、軽微な注意指導にとどまらざるを得ないと会社が判断したことに、納得ができない当事者や、その同調者が、感情的にあなたを攻撃するというものでしょう。あるいは、その当事者や同調者があなたの上司である場合、上司としての権限であるかのように始末書の提出を求めたり、謝罪文を書くよう命じたりすることもあるようですが、これらはその上司個人の感情的な判断であり、応じるべきではありませんし、そもそもそうした感情的にパワハラ加害者扱いをすること自体、嫌がらせであって、あなたがパワハラをしたかどうかについてなど、もはや一切考える必要はありません。

始末書の提出を求められた場合

始末書の提出を求められた場合、その始末書に何を書かせたいのか、という内容にもよりますが、一般論として、始末書は懲戒処分に伴って、将来を戒めるために自らを顧みて過ちを認め、それを繰り返さないことを宣明するものと考えられますから、懲戒処分の手続きを踏まずにいきなり上司から始末書を提出しろと命じられたとすれば、懲戒処分権限の濫用の可能性が濃厚であると考えられます。そうした意味でも、安易に応じないことは大切ではないでしょうか。

【参考コラム】始末書を求められた

それは、もしその始末書を提出した場合には、あなた自身が、パワハラ行為をしたことを認めたという言質を取られる格好の材料にされかねないこと、その始末書を理由に、将来の評価や昇進昇格等に影響を及ぼしかねない、という意味でも、重要でしょう。

パワハラと指摘された言動が事実である場合

程度の問題もありますが、少なからずパワハラと指摘された言動が事実であって、仮にそれが懲戒処分に該当するようなものではなかったとしても、また業務上の必要の範囲であると判断できる場合であったとしても、当事者間の信頼関係の問題として、パワハラを受けたと相談した被害者である従業員の心情を考えれば、今後の業務に相当な影響があることは間違いなく、会社としては、当事者同士の隔離措置を取ることは、最低限の対応と考えられます。

そのため、何らかの処分などがないとしても、配転等の措置は、ある程度の範囲で甘受する必要があると思われます。少なくとも業務上の接触を断つことは致し方ないでしょう。

【参考コラム】配置転換の打診

ただ懲戒処分ではない、人事上の措置として、配置転換等の措置が取られたとしても、その配置転換が、加害者とされたあなたにとって、著しい不利益を受けるようなものであるような場合までが認められる訳ではありません。あるいは人事上の措置として、降格や減給などの処分がなされる場合には、まずは降格・減給の処分の根拠が就業規則等にどう規定されているのか、確認することが先決でしょう。

【参考コラム】賃金減額

もっとも懲戒処分事由にも該当しないような言動によって、たとえ人事上の措置と言っても、降格・減給などが認められるとは思われませんので、毅然と対応する必要はあろうかと思います。

もっともらしい人事的な処分も、パワハラがえん罪であれば話は全く別

ここで問題があるのは、あなたを意図的にパワハラ加害者として処分されることを意図して、とてもパワハラとは判断できないような事実をパワハラとして申告をした場合です。真っ当な判断ができる人事であれば、適切な対応が期待できるかと思いますが、何らかの不当な意図が入り込んだ場合には、これを理由にあなたに対する人事的な働きかけがある可能性が考えられます。

具体的な対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。対処方法やその考え方などをコメントして返信いたします。

【参考コラム】問題解決のための行動に一歩踏みだす前にお読みいただきたいコラム~解決行動を起こす前に考えるべきこと

Posted by kappa