上司の命令は絶対ではない…!?
ハードルの高いノルマを課せられ、あるいは日々業務成績や改善に対する執拗な要求に苦痛を感じつつも、何とかしなければならないともがいているうちに、冷静な判断力を失ってしまっている自分に気が付くことがあります。
会社から求められる業務は、従業員であるあなたが履行すべき義務ですが、その業務が業務上必要な範囲を超えて、過重な要求になっている場合、この判断はとても難しいのですが、応じる義務のない場合もあるのです。元も分かり易いのは、業務とは関係のない範囲にその要求が及ぶことです。
プライベートに土足で入り込んでくる上司は、相手にしてはいけない
業務とは全く関係のないプライバシーの問題に立ち入るものは、明らかに過重な要求であって、決して応じるべきでないでしょう。この場合、要求というよりは、おそらくは上司の個人的な好奇心の餌食になるようなケースで、何でこんなことまで聞かれなければならないのか、答えなければならないのか、と対応に躊躇するものかと思います。
今でこそ個人情報に関しては、細心の注意が払われるべきところであり、たいていの組織ではそうした意識の徹底が図られているかと思いますが、そうした意識を全く持てない、理解できない管理職がいることも確かです。このような上司は、こうしたでりけーな内容の話に、何ら頓着することなり、あなたの懐に土足で平然と入り込んできますので、ダメなものなダメとシャットアウトする毅然とした姿勢が必要になってきます。
下手に断ると今後の仕事に影響するのでは、などとこの手の上司の問いかけに答えて、安易に個人的な話をすれば、次の日には全社員がその情報を知っているかも知れません。そうなってしまったあとでは、まさに文字通り後の祭り、ということになってしまいます。
ただ、こうした無神経な上司の場合、個人的なデリケートな問いかけをさも当然であるかのように平然と話しながら、あなたが答えに躊躇すると、
「水臭いな…この会社はそういう固いことを言ってると、誰からも相手にされなくなるよ」
「ここは田舎なんだから、都会とは違うんだよ、人間関係の作り方が…郷に入ったら郷に従えって言うだろ」
などと、あなたが個人的な話をしないことが、普通ではない、間違ったことであるかのごとく、攻め立てられたりします。こうした無神経な御仁をどうあしらうかは、頭の痛い課題でもありますが、だからと言って無批判に応じていると、あなたは間違いなくこの上司のいいカモ、おもちゃにされることは容易に想像ができるのではないでしょうか。つまり、セクハラ、パワハラの被害にある可能性が高くなる、ということです。ですので、いかに適当な距離を置きながら、ご機嫌を取るか、などという低レベルの問題で悩まされることは、あまりにもバカバカしいのですが…
違法な要求は問題外
業務命令として命じられた内容が、法に触れる場合もあるかもしれません。そうした場合には、はたしてそれをそのまま履行すべきなのか、冷静な対応が求められます。
一方、そうした明らかに業務の範囲外の要求を、はっきりと求められることはなく、暗にそうせざるを得ないような状況に追い込まれることもあるでしょう。かなりグレーですが、こうしたときこそ冷静な判断が求められます。もしあなたがそうした業務の範囲外の要求に応えてしまった場合、それはあなたが自発的にしたものであって、会社はまったくうかがい知らないこと、などと逃げられる可能性だったあります。つまり違法行為の実行犯に仕立て上げられる可能性もある、ということです。
しかもこうした法律に抵触するような業務を、あなたにすべて押し付けておきながら、それを命じた上司は、全く違く業務をしている、そして、あなたがその法律に触れるような業務についての指示を仰ごうとすると、
「それは私の仕事ではないし、詳しいことは分からないから、あなたの判断ですすめて…」
などと逃げるようであれば、こんな無責任な上司の指示に従う必要はありません。
もちろんそうした命令に従ってしまった場合でも、あなたがそうせざるを得なかったような状況を、会社が意図的に作り出していたなどの事実があれば、事後的に会社に責任を追及することも可能かもしれませんが、いずれにしても難しい対応を求められます。色々考えても仕方がありません。三十六計逃げるに如かず、です。
問題として悩ましいのは、どう考えても必要性が無いと判断できる業務命令
あなたが不満を持つと考えられる業務命令の一例は、例えば、終業時刻間際に、わざわざ残業しなけれならなくなる業務を命じるようなケースでしょう。残業が大好きな上司は、定時で帰宅するあなたを苦々しく思っていたので、腹いせに定時で帰ることができないように、残業しないと終わらない仕事をわざと命じている、とすれば、これはパワハラとしか言いようがないでしょう。
ですが、これに対して上司は、これは必要な業務であり、適切な業務命令で、残業させることは違法でも何でもない、などと自信満々で開き直ります。
ですが、こうした終業時刻直前での業務命令が、日常的にあるとか、明日以降の通常業務時に終わらせれば全く問題がない業務について、執拗に今日中にやるように命じるという事実があれば、その点を指摘して、そのような嫌がらせは止めて欲しいとはっきりとお求めになる必要があります。業務命令の必要性について議論をするのではなく、これは上司による嫌がらせだと断罪するのです。嫌がらせ以外の何物でもないからです。
業務上の上司の命令は、部下である従業員はそれに応じる義務があります。ただし、それが業務の必要な範囲のものであるという前提があります。疑心暗鬼になりすぎるのは問題ですが、「これはあまりにもおかしい」と感じたときに、ふと振り返ってみることは、自分自身を守るという意味でも、大切なことではないかと思います。
【参考コラム】過度な業務量、無理なノルマ
具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。