始末書には何を書くべきか

2023年10月6日opinion&topics

何かミスをしたことについて、始末書を書くように命じられることがあります。この始末書ですが、その目的はミスなどに対する反省と将来の間違いの防止を宣言させることにあると思われますが、反省や謝罪を強要することはできないため、通常は始末書というものの、その実態は事実関係の報告書であり、顛末書、ということになります。

たいていの始末書の実態は顛末書

ところがそうした報告を書を始末書として提出したときに、反省が足りないとか、謝罪の弁が無い、などとして再提出を求めることもあるようですが、上記の通り、こうした反省や謝罪といった本人の意思表示を強要することはできないため、こうした業務命令や処分は無効と考えられます。それだけなく、謝罪の意思表示を強要されたような場合には、即問題として指摘する必要があります。

謝罪の意思表示は強要できない

会社側として、どうしても反省の文言を始末書などに書かせたいとしても、強制はできないのですから、本人に対して自発的にそうした気持ちを書くよう求めるほかありません。それにたいして、期待通りの文言が書かれていなかったとしても、それを理由に不利益な取り扱いをすることは認められません。

本当に反省すべきは反省すべき旨を書いた方がいい

もっとも、本当にミスの原因が行為者である従業員の重大な不注意にある場合で、何らかの処分も相当とされるようなときに、始末書で済ますという温情措置に対して、反省の色も全く見えないというのは、いささか腹に据えかねるなどと思われてしまうかもしれません。やはり反省するべきは反省するという是々非々の姿勢で対応されるべきではないでしょうか。

繰り返しの書き直し命令は程度問題

ですが、あなたが提出した始末書には反省の気持ちが伝わってこない、などと始末書の再提出を求められるかもしれませんが、それも程度問題で、1,2回程度であればともかく、4回目、5回目、ひどい場合には十数回の書き直しを上司から命じられるなどと言うのは、それ自体がすでに問題であり、業務上の必要の範囲を超えていることは明らかです。

始末書の提出命令は懲戒処分が前提

始末書の提出命令は、懲戒処分の一つであって、懲戒処分であるならば、就業規則の懲戒規程を根拠に行われなければ、その処分は無効と考えられます。しかし実際には、始末書の提出は広範囲かつ安易に行われていることからすれば、上記の通り、始末書の提出は処分ではなく、事実関係の報告書であると解釈すべきかと思います。

懲戒処分なのかを確認すること

もし本当に処分として、始末書の提出を求められた場合には、こまず懲戒処分かどうかの明示の回答を求めることが肝要かと思います。もちろんこの場合でも、謝罪の弁や反省の意思表示を強要することはできませんから、会社の期待する内容ではなかったとしても、それを理由に、あるいは別の処分をする、ということは二重罰禁止の原則から認められません。

【参考コラム】懲戒処分を告げられた

始末書には、書きたいことを書けば良い

始末書をいざ書く段になって、何をお書きになれば良いのかでお悩みになったときは、ざっくばらんにあなたのお気持ちをそのままお書きになれば結構かと思います。

根拠の無い始末書提出命令であればなおさら…

理由も定かではなく説明も不十分で告げられた懲戒処分など、法的には無効であるにもかかわらず、平然と始末書の提出を求めてきたことに対しては、激しい怒りしか感じない、とか、処分の理由として指摘されたミスは、そもそも上司の○○課長からの日常的なパワハラによってまともな業務遂行ができなくなっていたことが原因であって、会社は私の処分の前に、○○課長のパワハラについて確認するべきではないか、とか、思いのたけをお書きになれば良いのではないでしょうか。

始末書を会社が準備してきた場合

本来始末書は、懲戒処分の理由となった事実に対して、その対象者に反省の意を自発的に書くべきものであるところ、会社がそれを代筆をして、サインだけを書くように求められた、などということも散見されるところですが、始末書の意味を全く理解していないとしか言いようがないものです。というよりも、表向きは、始末書を書くのは大変だろうから、一応ひな形があるからこれにサインをしてくれればいい、などと言う説明をすることがあるのではないかと思います。ですが、そのようなサインだけを求める始末書の実態は、会社が一方的にあなたに強要する「念書」であって、何が書かれているのか、よくお読みになることです。

その場でサインをしてはいけない

そんなものにサインはできないから、自分で始末書を書いて出す、という意思表示をあなたがしたときに、上司ら会社側から、いや、始末書は内容が決まっているから、これにサインをして出さなければ始末書を出したことにならない、などと言いだしたとすれば、これは何らかの不当な意図があることは間違いありません。あなたが自分で書いて提出すると言っているにもかかわらず、それを拒否するということは、おそらくその会社がひな型であるなどと言って提示した会社が勝手に作成した始末書には、とんでもないことが羅列されているのではないでしょうか。

会社が作成してきた始末書は持ち帰って内容を吟味すること

もしそのような事態に本当に直面したとすれば、あなたは、この会社が提示した始末書をしっかりと受け取り、一方で、会社は私の代りに代筆したなどと言う始末書へのサインと提出を強要したこと、しかもその会社が準備した始末書には、次にこうした処分を受けた場合には、いかなる処分も甘受するなどと書かれており、断じて容認しがたい、不当な意図があることが明白である、会社は大いに反省をして、私が書いた始末書を真摯に受け取るべきである、などとお書きになった始末書を、会社が準備した不当極まる始末書を添付して提出されれればと思います。

なお、始末書については、こちらもご覧ください(あなたの抱える問題は何ですか?「始末書を求められた」)。

具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。

【参考コラム】問題解決のための行動に一歩踏みだす前にお読みいただきたいコラム~解決行動を起こす前に考えるべきこと

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Posted by kappa