始末書について

何かミスをしたことについて、始末書を書くように命じることがあります。この始末書ですが、その目的はミスなどに対する反省と将来の間違いの防止を宣言させることにあると思われますが、反省や謝罪を強要することはできないため、通常は始末書というものの、その実態は事実関係の報告書であり、顛末書、ということになります。

ところがそうした報告を書を始末書として提出したときに、反省が足りないとか、謝罪の弁が無い、などとして再提出を求めることもあるようですが、上記の通り、こうした反省や謝罪といった本人の意思表示を強要することはできないため、こうした業務命令や処分は無効と考えられます。それだけなく、謝罪の意思表示を強要したような場合には、慰謝料請求の原因となる可能性すらあります。

どうしても反省の文言を始末書などに書かせたいとしても、強制はできないのですから、本人に対して自発的にそうした気持ちを書くよう求めるほかありません。それにたいして、期待通りの文言が書かれていなかったとしても、それを理由に不利益な取り扱いをすることは認められません。

もっとも、本当にミスの原因が行為者である従業員の重大な不注意にある場合で、何らかの処分も相当とされるようなときに、始末書で済ますという温情措置に対して、反省の色も全く見えないというのは、いささか腹に据えかねることもあろうかと思いますが、それに対しては、もはやさらに何らかの処分をすることはできません。もっともこうしたケースはむしろまれで、問題となるのは、特定の従業員を排除する、あるいは不利益に扱うことを意図して、恣意的に始末書の提出を求めるケースです。

始末書の提出命令は、懲戒処分の一つであって、懲戒処分であるならば、就業規則の懲戒規程を根拠に行われなければ、その処分は無効と考えられます。しかし実際には、始末書の提出は広範囲かつ安易に行われていることからすれば、上記の通り、始末書の提出は処分ではなく、事実関係の報告書であると解釈すべきかと思います。

もし本当に処分として、始末書の提出を求めるのであれば、これが「譴責」などの懲戒処分であることを明示して求めることが肝要かと思います。もちろんこの場合でも、謝罪の弁や反省の意思表示を強要することはできませんから、会社の期待する内容ではなかったとしても、それを理由に、あるいは別の処分をする、ということは二重罰禁止の原則から認められません。