退職は最後のカード。軽々に切るべきではない
退職するということの意味
「これって嫌がらせなのか、会社は辞めて欲しいと思っているんじゃないのか…?」
「こんな状況で仕事なんか続けられない。こんな職場に居ても仕方がない…」
などと考えて、退職の意思を上司などに告げてしまうことは、誰でもあることかと思います。退職を告げることによって、理不尽な状況から解放されることで精神的に職場との関係を断ち切り、気持ちを切り替えて次の仕事に向けて注力する、という意向を強く持っている場合には、退職のカードを切ることに躊躇すべきではないでしょう。
退職は、解決行動の大きな制約になる
ですが、もし何らかの問題解決を考えているのであれば、退職の意思表示は軽々にすべきではないと思います。それは、在職中の問題の解決は、在職中でなければできないことがその大半だからです。離職後に何らかの問題解決を会社に求めたとしても、離職した社員の問題解決に会社が対応するとは思えないからです。ここで残された解決行動は、金銭の補償を求めることにならざるを得ません。
もし仮に金銭解決を図るとしても、その問題の事実関係の裏付けをどうするのかという問題があります。特に在職中に解決行動を起こしていなかった場合には、会社からの業務命令など客観的に事実関係を確認できるものに問題がある場合でなければ、問題の事実の確認すら容易ではありません。
退職のカードは、いつでも切ることができる。でもいったん切ってしまったら、次のカードは無い
会社が、あるいは上司が、あなたを退職させたいという意向を持っていた場合に、はっきりと退職勧奨を受ければ、退職勧奨の問題として真正面から考えることができますが、その退職勧奨の意図を隠して、無視や業務指示などの意図的な不徹底、あるいはお菓子外し、飲み会外しなどの嫌がらせ、シフトを減らす、といった対応がとられた場合には、まずそれらの嫌がらせについて、止めて欲しいというメッセージを発信することが極めて重要になってきます。
ここで、
「そんなに嫌われているのなら、いっそ辞めてしまった方がすっきりする」
と考えて、退職の意思を示すことも、これはこれで一つの判断です。しかし、退職のカードを切ってしまった場合には、もうこの問題について解決行動を事実上放棄しなければならない可能性が高いと考えなければなりません。確かに、陰湿な嫌がらせを繰り返す上司や会社に対して、問題解決行動を起こすことは、大きなエネルギーの消耗とストレスであることは間違いありません。そうした負担が、日常の仕事に加えて大きくのしかかってきます。その上、もし転職も同時に考えているとすれば、転職活動のエネルギーも必要になります。
そのように考えれば、納得のできる結論が得られるかどうかも分からないような解決行動を起こすよりも、腹立たしい気持ちはあるとしても、退職してすべてのエネルギーを将来に向けるという選択肢は、精神的にも健全かも知れません。
ですが、これが選択すべきものかどうかは、じっくりと考えることが大切ではないでしょうか。それは、退職のカードは、いったん切ってしまったら、次のカードは無いからです。
しかし、じっくり考えると言っても、考えるだけで何も行動を起こさなければ、事態は何も変わらない、後にも先にも進まないのです。嫌がらせのストレスを受けながらの日常が続いていくだけです。メンタル面での影響も考えれば、いたずらに時間ばかりを費やすことは、避けるべきでしょう。ではどうすべきか…
解決行動を起こして、会社の対応を見極める
もし今の状況が改善されれば、この職場で引き続き仕事をしていきたい、それができないのであれば、会社都合で離職したい、再就職までの金銭の補償も要求できれば…おそらくはそのようにお考えになる方が、大半ではないでしょうか。そうであれば、まずは解決行動を起こすべきです。
その解決行動に対する会社側の対応を見極めることができれば、会社のあなたに対する姿勢も見えてきます。ここで、どのような選択肢を選ぶのか、引き続き会社との交渉を続けるのか、これ以上の解決行動はしないのか、をお考えになることが肝要ではないでしょうか。その結論が「退職」なのであれば、ここで初めて退職のカードを切ればいいのです。
具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。