解決行動で、本当の状況が確認できる
「結局、会社は何もしてくれないんです」
「同僚からは、いつも、冷たい目で見られています」
「何もしても、解決しないと思います」
頂くご相談なかには、上司のパワハラに会社は黙認状態、職場の同僚も冷ややかな目で見ているだけ、だから問題の解決はできないと思う、などとお考えの方も散見されます。
このようにお考えの方に対しては、では、実際にそうした問題を解決するために、何をしたのか、をまずお聞きするのですが、意外と多いお答えは、
「解決行動を起こしてもムダ」
「これまでにも、問題が解決せずに、何人も同僚が辞めている」
「解決を求めても、何かするとは思えない」
というものです。つまり、まだ何も解決行動を起こしていない、のです。
解決行動を起こさずに結論を出すことの意味
確かにこれまで職場で起こった状況をみれば、問題は何も解決されてこなかったことが分かるかもしれませんが、ここで大切なことは、なぜ問題は解決されてこなかったのか、という点です。
もしかしたら、これまでだれも解決行動を起こしていなかったのかもしれません。そして、そのような中で、状況が放置され、何人もの同僚が自ら離職していったのかもしれません。この離職という選択肢を選ぶことの是非はともかく、解決行動を全く起こさずに、何らかの結論を出したとすれば、それは大きな誤解に基づいている可能がある、と考える必要があります。つまり、自分の中だけの「推測、憶測」であり「想像」によって、方向性を導き出してしまったのではないかと、ということです。
もちろん、その結論について、あなたご自身が納得をして、すべてを飲み込んでいるのであれば、それも一つの考え方であって、問題の状況に対する自分自身の気持ちの折り合いの付け方です。
ですが、しばらくしてから、その結論について、やっぱり納得ができない、会社の対応は許せない、というお気持ちから、問題の相手に対して、会社に対して、責任追及をしたい、慰謝料請求をしたい、とお考えになるとしたら…その時に必要になるのは、一旦ご自身で気持ちに折り合いをつけた結論を覆す、という作業です。つまり、それが不承不承ではあったとしても、自分で出した結論は間違っていたことを認めなければならない、ということです。
そして、その矛先をかつてのトラブルの相手に向けるためには、そのいったん下した結論は、そのときの状況から、やむを得ずに出したものだった、という前提が必要になります。つまりその時に、解決行動を起こさなかった原因が、トラブルの相手方にある、という理屈が必要になるということです。
これはかなり厄介な話で、この段階では、ケースバイケースではありますが、社内的な話し合いによる解決は、かなり困難ではないかと感じます。
解決行動を起こしていれば、状況は変わるのか
ご自身で結論を出す前に、もし何らかの解決行動を起こしていたとすれば、状況は変わったのか、つまり事態の進展があるのかどうか、これは解決行動を起こしてみなければ分からない、としか言いようがありません。
「それじゃあ、結局同じことじゃないのか」
と考えたくなりますが、結果として、解決行動を起こさずに出した結論と、解決行動を起こして出した結論が、仮に同じであったとしても、状況は全く違うのです。解決行動の起こさずに出した結論は、自分の中にある「推測」に基づくものである一方で、解決行動を起こして出した結論は、解決行動の結果として生じた事実に基づくもの、という大きな違いがあります。
解決行動は、「推測、憶測、想像」を「事実」に変える
解決行動を起こした結果、例えば、上司によるパワハラの解決を求めたが、会社はこれをパワハラとは認めずに、状況が放置され、離職せざるを得なくなった、とすれば、これは問題が解決しない、という事実がその原因になるのです。
問題は解決しない、という状況について、解決行動を起こさない場合には、それが自分の推測であったものが、解決行動を起こした結果であれば、それは推測ではなく、事実に他ならないということになるのです。
事実の積み重ねが、納得のできる結論を導く
推測に基づく結論は間違っている、という訳ではありません。あとから、「あのときやっぱり…」とお考えになるかもしれないのであれば、解決行動を起こした上で、結論を出すべきだと思うのです。
解決行動によって、全く想像していなかった事実が現れることもあります。あるいは、長年自分が思い込んでいた推測、憶測が、「なんだ、そんなことか」という全く見当違いな誤解だった、ということもあるのです。
解決行動は、一回の解決行動で、問題がすっきり解決することはまれで、繰り返し起こさなければならないことがたいていの場合でしょう。その中で、事実を積み上げることで、より正確な、状況を「事実」として把握することが可能になりますから、得られた結論は、納得性の高いものになるのではないでしょうか。
もちろん、解決行動によって、事態の打開を図ることができれば、雇用の継続も可能になります。そして何よりも、ご自身で解決行動を起こし、状況の進展が多少なりとも得られたとすれば、それはあなたにとって、大きな「自信」という財産になると思います。
具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。