退職勧奨を意図した業務改善計画(PIP)にどう対応するか

2023年10月6日opinion&topics,退職勧奨・リストラ

最近外資系の企業を中心に、リストラを目的とするPIPが蔓延しているように感じます。PIPを実施すればスムースにリストラが進むと考える向きがあるのか、コンサルタントが企業に指南しているのか、その多さ、やり方の卑劣さにやりきれない思いがします。

そもそもPIPは、従業員のスキルアップを目的とするものであって、それに対する評価が芳しくないことを理由に退職勧奨をするような代物では全くないのですが、退職勧奨にスムーズに応じさせるため、不要不急の研修を命じて過酷な課題を与え、予定通りの低評価をつけて、退職勧奨するのは、いじめ嫌がらせそのものであって、そのようなPIPはパワハラそのものであると感じます。

ところが、シフトの減少賃金減額配転降格に対してまで、これはパワハラではないか、とお考えになる方が多いのに対して、なぜがPIPに対しては、これがパワハラであるとお考えなる方は少ないようです。PIPは教育研修であって、スキルアップを図るもの、という認識も手伝っているのかもしれません。もっともそのPIPのプロセスで、暴言や過大な要求などがあれば、それをもってパワハラと考えることはあると思います。

しかし、会社の意向は、ターゲットとなった従業員の退職なので、それを意図してわざわざPIPなどという箸にも棒にもかかならいような変化球を投げ、それを打ち返せなかったことを理由に評価を下げるとか、退職勧奨をします。この場合、評価の結果や退職勧奨というものに直面したときに、問題の深刻さを初めて感じる方も多いと思います。PIPの実施時よりも、その結果に直面して、はじめてこれを問題としてお考えになるには、とくに勤続年数の長い方など、まさか自分が・・・とお考えになる方は特にそうではないでしょうか。これもPIPが蔓延する要因の一つかもしれません。

ですがPIPと言えば、リストラのツールであるという認識はほぼ定着しているのではないでしょうか。問題は、そのリストラのツールであると第三者的には考えることが誰でもできるPIPが、いざ自分に命じられた、あるいは、PIPの対象となったなどと告げられたとき、冷静な判断ができるかどうか、やはり上記のように、自分は違う、と思いたい気持ちが少なからず行動に影響を及ぼすのです。

大切なことは、PIPの対象であると告げられた時に、それを冷静に受け止め、あなた自身を取り巻く状況を客観的に見つめることなどですが…では、このPIPには、どのように対応すればいいのか、考えてみます。

PIPを打診された場合

打診された、つまり、あなたがPIPの対象となったことは間違いないとしても、それに応じるかどうか、PIPを実施するかどうかはあなたの任意の判断である、というものです。もちろんPIPが本来の目的に沿った正しい使い方をしているのであれば、応じることにやぶさかではないとは言うものの、あなたの会社で実施されてきたPIPが、やはりご多分に漏れず、リストラのための文句付けツールになっていて、これまでにもPIP対象者がいつの間にか退職していたということがあったということであれば、応じるかどうかは任意なのですから、応じるつもりはない、とはっきりお答えになっておくべきかと思います。

もしも、より慎重な対応をお考えであれば、一応あなたに実施する予定であるPIPについて、その内容の詳細の説明を求めてみてはどうかと思います。リストラを意図した文句付けツールのPIPであれば、その内容について明確な説明はありません。あなたが応じる回答をしてから、面談等でその内容を詳細に検討します、などと言う都合のいい回答は、結局何も考えていないことと同じで、ただPIPに応じるかどうかだけを聞いたという、非常にふざけた回答であるということをはっきりと認識する必要があります。

拒否したら、立場が悪くなるのではないか…?

その前に、あなたはPIPの対象となっていて、実施するかどうかを打診されている、という意味は、あなたはリストラの対象になっている、と言われているに等しいという事実を、まずはしっかりと受け止める必要があります。しかも人事は、そのレールに乗るのか、乗らないのか、という判断をあなたに投げかけたのです。もしこれに応じたとすれば、あなたはこのレールに乗ることを自ら進んで選択した、ということになるのです。

ここからは、リストラの対象となったあなたが、今後この会社とどのように関わっていくか、このまま仕事をお続けになることを選択するのであれば、応じるべきではないでしょう。あなたは会社に対して、離職する意思は全くないというメッセージを発信する必要があるからです。それに対して人事は、それでもあなたをリストラの対象として、外堀を埋めたいと考えているとすれば、形を変えた罠が準備されることでしょう。ここからは、会社側をいかに牽制しつつ、雇用の継続を図るか、が課題になります。

PIPを命じられた場合

業務命令としてPIPが命じられたとすれば、これは応じなわけにはいかないということになります。その前に、本当に業務命令かどうか、改めて確認をしておくことが賢明ではないでしょうか。そこでもやはり業務命令であるという回答であれば、応じるほかありません。

ところが業務命令であれば、必要であれば辞令でも交付すれば済むところ、わざわざPIP実施に関する書面のようなものを提示して、サインを求められることがしばしばありますが、サインをする必要はありません。この書面には、PIPの結果次第では、会社側からの解雇を含めたペナルティーについては甘んじて応じるといった内容が書かれていることが典型です。しかもサインをさせるにあたっては、これな同意を示すサインではなく、説明を受けて理解したことを示すサインだ、などと詐欺まがいの誘導をすることも典型です。

そして実際にPIPが実施された場合には、その内容について、不適切なものついては、適宜問題として解決をお求めになること、例えば、研修講師が暴言を吐く、おまえばダメ社員だなどと連呼する、と言ったことがあれば、即座に人事に問題として中止を求める必要があります。もちろん人事は百も承知ですが、それをあえて問題であると指摘することに意味があります。

つまりこの段階では、会社からあなたを排除したい人事と、雇用の継続を図りたいあなたとの、熾烈なバトルであると考える必要があり、PIPの結果次第では、あなたの評価が上がるなどということはあり得ないのです。

もちろん、そこまでしてあなたをだまし討ちのような卑劣な方法で離職に追い込もうとするような会社に、いつまでもしがみつく必要はない、早々に離職をするという考え方も、これはこれで、とてもさばけた建設的な選択肢と言えるかと思いますが、これは価値判断です。

具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。

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