パワハラの事実を認めてもらえないのはなぜか?

2025年6月3日opinion&topics,解決行動のヒント

パワハラは、容易に認められるものではない

あなたが今直面し、まさに悩んでいるパワハラの問題について、会社側に解決を求めるためにそのパワハラの事実関係を説明しているのに、その説明をしている相手の会社側担当者は、それはあなたの思い過ごしじゃないのか、とでもいわんばかりの胡散臭そうな表情でまともに取り合おうとしない…あるいは、「それは辛いよね」など表向きは共感してくるような相づちを打ちながら話は聞いてくれるけれど、結局話を聞いてくれるだけで、それで終わり…そんな状況に落胆したあなたは、解決をあきらめるか、会社外部の第三者への相談を考えるでしょうか。実際にも、会社がパワハラの事実を認めてくれない、というご相談はよくお受けする内容の典型でもあります。

その理由を考える

ここでいったん立ち止まってお考えいただきたいことは、なぜ会社はあなたが説明したパワハラの事実を認めないのか、なぜ正面から問題として受け止めてもらえないのか、その理由、背景です。あなたの思惑通りに会社が対応しないのは、会社としての理由があるからです。その理由が推測できれば、その理由をどのように取り除くかを考えることで、事態打開の糸口が見つかるのではないでしょうか。

パワハラに対する会社のスタンス

パワハラはあってはならないものであることは当然、といっても、いざそうした問題の指摘があった時に、会社の担当者はどう受け止めるのか、それはその担当者次第でもあり、また会社としてのこうした問題への対応方針が大きく左右します。パワハラはあってはならないものであると同時に、ウチの会社では、そんなことはあり得ない、という考え方が一般化していれば、パワハラ申告があったとしても、ウチの会社ではありえないのですから、「それは一方的な思い込みじゃないですか」という返答が返ってきても不思議ではありません。もっとも、パワハラ申告に対して、そんなけんもほろろな対応をすれば、それこそパワハラだとか、パワハラ防止法違反だなどと言われかねないと考えて、とりあえず話を聞く姿勢を見せるかもしれませんが、ウチの会社ではありえないのですから、結論は同じことでしょう。

パワハラであると認めて欲しい、という要求は受け入れられない

会社がパワハラを容易に認めないもっと根本的な理由は、パワハラはあってはならないものという前提があるのですから、それがウチの会社にあっては困ると考えるのは当然でしょう。ですから、もしあなたが、上司からパワハラを受けてます、パワハラを認めて上司に謝罪して欲しい、などと会社側にお求めになったときに、もし会社が、それは大変だ、すぐに上司を処分します、などと対応したとすれば、それこそ問題なのです。そのような対応をする会社があるとすれば、おそらくパワハラ加害者の冤罪が蔓延しているでしょう。つまり、会社がパワハラを認めるということは、単にあなただけの問題ではなく、会社を含めたすべての関係者が影響を受ける問題なのです。

パワハラ申告に対する正しい対応手順

パワハラ申告のスタートは、そのパワハラであるとあなたが考える問題の言動の事実関係を指摘することから始まります。その指摘した事実について、相手方当事者から確認作業、いわゆるヒアリングを行い、双方の主張が一致した事実を会社は事実としてここで初めて認めることになります。そして次の段階で、その認められた事実は会社のハラスメント防止規程等の定義に基づいて、パワハラに該当するのかどうかを判断し、さらにその行為者への懲戒処分が検討されることになります。ですから、「パワハラを受けました」「暴言が投げかけられました」「誹謗中傷がありました」では、事実の指摘にはなりません。事実関係の確認作業ができないからです。

具体的な事実の指摘に尽きる

ですので、パワハラの問題解決をお求めになりたいあなたがまずするべきことは、あなたがパワハラであると考える問題の言動の事実を詳細に伝えること、になります。もしこれまでの会社側への働きかけで、こうした具体的な事実関係をあまりお伝えになっていなかった場合には、改めて詳細な事実関係をお伝えになることが賢明ではないでしょうか。主観的抽象的な形容詞や表現、感情的なあなたの気持ちなどは、一切お伝えになる必要はないのです。

真摯に対応しようとしない会社への働きかけを考える

具体的な事実関係を5W1Hを整えて詳細に報告したのに、会社からの返答はなしのつぶて、進捗を聞いても、事実確認に時間がかかっているとか何とか言われたまま数カ月がたつ、しかもあなたから問い合わせなければ何も説明などもない、などという場合、おそらくは意図的に対応を遅らせている、あるいは対応する気がない、その意思がない可能性が考えられます。つまり、経営判断としてあなたからの申告には応じないことを決定している、という状態です。

対応の遅れについての説明が無いのは、説明できないから

仮に経営判断として、あなたの申告内容については対応しないと決定したのであれば、なぜそのような決定をしたのかについて、あなたに対してきちんと説明があるべきで、その説明にあなたも納得ができれば、ではどうすればいいのかを次に考えることができるわけですが、意図的に対応しないことにしながら、その決定をあなたに告げずにうやむやにしたまま、時間がかかるなどと見え透いた嘘の言い訳を並べ立てているとすれば、その判断について説明ができない、もっと言えば、その判断が妥当ではない、適当ではない、あるいは違法性があることを認識しているからこそ、それを説明できないと推測できないでしょうか。

一部事実は確認しましたが、パワハラとは認められませんでした…

あなたからの働きかけや問い合わせに対して、言を左右にして一切対応をしようとしない会社に対して、あなたは書面をしたため、詳細な資料とともにあなたがパワハラであると考える事実関係について指摘をして問題の解決を求めたところ、ようやく重い腰を上げたと思ったら、「一部事実は確認しましたが、パワハラとは認められませんでした」という簡単な回答で、対応終了とされてしまった。実はこれは、パワハラ対応の典型の一つでもあります。会社としてパワハラとは認めないと判断されてしまった以上、もう社内的に解決を図ることは難しい…と思ってしまいそうになりますが、その前に考えていただきたいことがあります。

そもそも、なぜあなたは会社にパワハラを認めさせたいのか?

あなたが会社にパワハラを認めさせたいと考えたのは、それは何のためなのか、パワハラを認めてもらって上司に謝罪をして欲しい、慰謝料を払ってほしい…あるいは、パワハラと認めてもらうことで、気持ちに納得ができる、とか、パワハラであると認めてもらうことで、何か問題解決を図れたような気分になる、パワハラ上司に勝ったと思える…様々かと思いますが、ですがその目的は会社にパワハラを認めさせることとイコールでもなく、もっと言えば、会社がパワハラであると認めることで目的は達せられるわけでもない、のではないでしょうか。もしそれがあなたの気持ちの問題であるとすれば、その気持ちを満足するためのハードルはあまりに高いものかもしれません。

あなたにとっても問題解決とは何かを具体的に明確化する

もし上司の言動を改善して欲しい、とお考えであれば、それをあえてパワハラだなど指摘をして、解決のハードルを上げる必要はない、と思いますが、どうでしょうか。パワハラという概念を問題解決ののプロセスに差し挟むことで、無用の混乱を引き起こすだけかもしれませんし、むしろ言動を改善して欲しいことをストレートにお求めになるほうが、はるかに早く解決ができるのではないでしょうか。単刀直入に、解決をお求めになることが、より早くゴールにたどり着くことができるものではないかと思います。

具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。

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