シフトの減少にどう対応すべきか

2023年10月6日opinion&topics,シフトに関する問題

 シフト制で就労するパート、アルバイトは、日々の業務の繁閑に応じて勤務日数を柔軟に変更することがあらかじめ予定されている、という一般論としての前提があります。ですから、

「いきなりシフトを減らされた」

「こんなにシフトを減らされたのでは、生活ができない」

などと相談を持ち掛けたとしても、

「それはシフト勤務なんだから、仕方がないでしょう」

とか

「シフト勤務は、もともとそういうものなんですから、ほかに仕事を見つけられたらどうですか」

などと回答されてしまうことが、容易に推測できます。

 ですが、それは、繰り返しになりますが、シフト勤務という勤務形態に対する、一般論としての考え方、もっと言えば、形式的な解釈にすぎない、という点に気が付く必要があります。これはシフトを減らす側にとって、極めて好都合な理屈です。というよりも、そもそもそうしたものなのですから、この理屈をどう覆すのか、これがシフトを減らされた側が考えなければならない、難しい課題、ということになります。

 この理屈を覆す、ということは、社会一般で考えられているシフト勤務という勤務形態に対する考え方の枠組みでは、捉えることができな事情が存在していることを指摘できなければならない、ということにほかなりません。

理屈をどう覆すか

 シフト勤務という考え方の枠組みではとらえることが適当でない状況があることを、的確に指摘することが、大前提になります。例えば、これまでの勤務シフトが、曜日固定で1日8時間勤務であった、とすれば、これはフルタイムの正規雇用社員と同じ勤務時間ではないか、シフト勤務という実態はなかった、と指摘することができます。いわゆる「フルタイムパート」というものしょう。業種によっては、正社員でもシフト勤務の場合はあるのですから、勤務形態の面だけを捉えて判断することが適当ではないケースもかなりあるのではないでしょうか。

シフト勤務でも日数は固定されていた、と主張できるか

 「フルタイムパート」は論外としても、1日4~5時間で、曜日の変更はあるものの、週4日は確実にシフトに入っていた、というケースは、かなり多いかと思います。ここでシフトが減らされた、とすれば、これはシフト制とは言うものの、週4日勤務が固定された契約内容となっていた、と指摘できる余地があるのではないでしょうか。

 状況は同じでも、例えば、これまで例外なく週4日のシフトが組まれていた、という場合と、大抵の週は4日勤務だが、業務の繁閑に応じて2日の週や3日の週もある、という場合では、考え方も異なりますが、週4日のシフトは全く無くなり、今では週1日すらおぼつかない、という状況に、いきなりなったとすれば、きちんとした説明が会社側からなければなりません。

徐々に減らされたシフトは問題とするのが難しい

 一方で、当初は週4日だったものが、業務の繁閑に応じて週3日のになったり、週2日になったりするシフトが継続し、いつの間にか週4日のシフトは全く無くなった、やがて週2日のシフトが当たり前になり、今では週1日がやっとの状態、という経過をたどっていたとすれば、

「週4日に戻してほしい」

と求めたとしても、

「いきなり言われても…」

「他のスタッフもいるのに、あなただけ増やす訳には…」

という返答が返ってくることは、容易に想像ができます。ですが、これまでにも折に触れて

「シフトを増やして欲しい」

と求め続けていたにもかかわらず、一方的に減らされてきた、という状況があれば、多少は展開も変わってくるでしょう。しかし、こうした状況を、外部の相談機関などに相談されたとしても

「それはシフト勤務なんですから…」

と一蹴されてしまうことも往々にしてあるでしょう。シフト勤務は、そもそもそう言うものである、という前提が、シフトを減らされたことを不当であると主張する場合の大きな壁であることは間違いありません。

シフト勤務だからといって、いかなるシフト編成も許されるのか

 シフト勤務という契約形態やその実態について正面から反論ができないとしても、シフト勤務という考え方の枠組みの中で、シフトの減少の問題を指摘することができない訳ではありません。ここまでのお話は、シフト勤務というルールの問題でした。

 しかし、シフトが減らされるのがあなた一人だけ、とか、シフトの組まれ方にあまりにも偏りがある、公平性が無い、といった場合には、シフト編成担当者の、何らかの意図が働いている可能性が強く感じられます。おそらくはシフトに関する問題の大半は、このような個人の主観的な要因が、その原因であるのではないでしょうか。

 そうであれば、これはシフト勤務の問題ではなく、シフト編成担当者による業務上の権限の濫用に当たる可能性が考えられます。

「シフトが減らされたのは、パワハラだ」

これが問題の本質かも知れません。しかし、シフトが張らされたことがパワハラであると主張する場合には、確かにそのように主張できる状況があるとしても、いきなり 「シフトが減らされたのは、パワハラだ」 と主張してしまった場合には、

「そうは言っても、シフト勤務なんですから…」

という返答で終わってしまいます。くどいようですが、ここからが重要です。ここで、

「確かにシフト勤務は、シフトを柔軟に組むことができる勤務形態であって、シフトが増えたり減ったりすることがあるのは当然です。ですが、そのシフト組み方が、偏っている、公平性が無い、これが問題なんです」

という指摘を、具体的なシフト編成の状況を説明しながら、説得力を持って主張できるかどうか、が課題になります。

【参考コラム】シフトを減らされた

具体的なケースへの対応については、ご相談メールをお送り下さい(「パワハラ相談窓口」のページへのリンク)。

【参考コラム】問題解決のための行動に一歩踏みだす前にお読みいただきたいコラム~解決行動を起こす前に考えるべきこと